「天使のたまご」はアメリカでは、2022年10月14日に限定上映された
日本では1985年12月15日に、OVAとして発売された
押井守が原案・脚本・監督を務め、天野喜孝がアートディレクターを担当したファンタジー作品
水没した都市の中で、たまごを抱き続ける少女
彼女は、それが天使のたまごであると信じていた…………
明確なストーリーや説明的なセリフはほとんどなく、ひたすら幻想的で象徴的なシーンが描かれる
4Kリマスター版が第78回カンヌ国際映画祭に正式出品された「天使のたまご」
果たして海外ではどういう評価をされているのか?
「天使のたまご」
水没した都市の中で、少女はきれいなガラスのビンを集めながら暮らしていた
彼女はお腹に大きなたまごを抱えていた
それが天使のたまごだと、少女は信じていた
ある日、少女は大きな銃を抱えた少年と出会った
少年はたまごの中身を訊ねた
「卵というのは、割ってみなくては中に何が入っているのか分からないのだよ」
しかし、少女は割ることを拒んで…………
少年を演じるのは根津甚八
少女は兵藤まこ
アートディレクションは天野喜孝
作画監督は名倉靖博
原案・脚本・監督は押井守
アニメーション制作はスタジオディーン
海外の評価
アメリカでは「Angel’s Egg」のタイトルで上映された
現時点でのIMDbのスコアは7.5/10
ロッテントマトの観客支持率は83%
メディアの評価
Anime News Network
「天使のたまご」はまるで廃墟となった水族館を歩いているかのような、深い悲しみと安らぎが同居した作品です
2023年9月10日、ジャパン・ソサエティのイベントで10年以上ぶりに米国で公式上映されました
私も今回初めてこの映画を観たのですが、まさに素晴らしい作品だったとしか言いようがありません
押井監督自身もやりすぎだと考え、ほとんどの観客には難解すぎる作品だと断言しました
これは的確な表現ですが、「天使のたまご」は「理解できた」「理解できなかった」という自己満足のリトマス試験紙のように捉えるべきではありません
この作品が何を意味するかは完全に観客に委ねられ、その試み自体が一部の人々を遠ざけるでしょうが、その世界に浸り没入したい観客にとっては、その様々な暗示とダークな美しさに深い満足感を得られるでしょう
評価:A
PopMatters
「天使のたまご」のストーリーは曖昧さに満ちており、明確な説明を求める視聴者を苛立たせるでしょう
けれど、象徴的なパズルや想像力で空白を埋めていくのが好きな視聴者にとっては、この作品は没入感あふれる喜びをもたらし、何度も繰り返し鑑賞することで深く学ぶことが出来るでしょう
J-Pop.com
この映画は天野喜孝による美しいアートワークによって支えられている
彼の繊細でバロック的なスタイルは、かつてないほど見事に表現されている
この作品は奇妙で、おそらく宗教的な意味合いを示唆する映像が繰り返し登場する
これらは全て意味を成すのか? 無意味なのか?
キリスト教のシンボルを非キリスト教徒の視点から解釈するという奇妙さ、答えの見つからない難解な作品という域を超えて、「天使のたまご」は力強い雰囲気と世界を喚起する作品として際立っている
Otaku USA
押井守と天野喜孝が1985年に共同制作したこの作品は、アニメ映画の中でも最も美しい作品の一つです
同時にその意味について様々な憶測が飛び交う、最も奇妙な作品の一つでもあります
押井監督自身が作品の意味をよく分かっていないと語っています
天使の遺物と青白い顔をした少女のイメージは、制作中止となったルパン三世の映画から来ています
盗むものが何もなくなった泥棒は、幻の天使の化石を追い求めます
Senses of Cinema
「天使のたまご」は日本でもあまり知られていないが、多くの批評家や押井のファンはこれを彼の最高傑作と呼ぶだろう
のちの「機動警察パトレイバー2」や「攻殻機動隊」はより重要で洗練されているが、それでも「天使のたまご」は押井監督の最もパーソナルな作品であり続けている
THEM Anime Reviews
「天使のたまご」は私が今まで観た映画の中で、断然最も難解な作品だ
なのに、どうしても好きになってしまう
作画とアニメーションはただただ美しく、これは「ヴァンパイアハンターD」や「ファイナルファンタジー」などで知られる天野喜孝の作品であることを考えると当然と言えるだろう
この映画はまさにシュールレアリズムの世界だ
押井守監督の他の作品(うる星やつら、機動警察パトレイバー、攻殻機動隊)をご存知の方にとって、「シュール」は馴染み深いテーマだろう
しかし、本作は彼が手がけた他のどの映画やシリーズとも一線を画している
そして、答えを得るよりも多くの疑問を抱くことになるだろう
結局のところ、「天使のたまご」は内省的な作品として真の傑作だ
アニメといえばドラゴンボールかポケモンだと思っている人にとっては、全く理解できないだろう
5/5
観客のレビュー
「『天使のたまご』はあらすじを説明するような映画ではありません。物語の意味は象徴的なイメージで語られ、観客の解釈と理解に委ねられています。天野喜孝のデザインと、押井守の息を呑むような演出が光る映像美はまさに絶品です。菅野由弘が手がけた音楽も素晴らしい。これほど意味深く、思慮深く、美しい映画を、決して見逃すべきではありません」
「映像美が素晴らしい。ストーリーは難解ですが、悪くなかったです。もし見ることが出来るなら、ぜひお勧めします」
「監督のパーソナルな思いが色濃く感じられる映画です。じっくり見れば、深い意味を持つ美しい作品です」
「『天使のたまご』は視覚詩で、まるで暗い世界に浮かぶ悪夢のようです。一味違う映画体験を求めるなら、必見です」
「非常に雰囲気があり、ビジュアル重視のアニメで、短編映画に近い。押井守監督の初期のアニメ作品としては、特別な作品です」
「押井監督の作品はほぼ全てがキリスト教に大きく依存している。『天使のたまご』はその最たる例だ。ノアの洪水、誕生、死、そして再生といったテーマは、登場人物が説明しなくても明らかである。この映画は万人受けする作品ではない。しかし、哲学的な体験や純粋に美しい映像を求める人間には必見だ」
「天野喜孝による作画が素晴らしい。このダークな世界の色彩と雰囲気には、心を揺さぶられます」
「『天使のたまご』は息を呑むほど素晴らしい映像の連続です。アニメーションは美しく、天野喜孝の世界観を見事に表現しています。それは過去でも現在でも未来でもない、中世と終末後の世界を等しく融合させた世界であり、その世界観は押井の作品の中でも最高の出来栄えです。深い意味を探求するのも良いですが、むしろ目の前に広がる美しく絵画的な映像をただただ楽しむのがおすすめです」
「映画とは言えない。どちらかと言うとスライドショーといった感じ。押井守監督自身もこの映画が何なのか分からないと発言している。眠くなるのには最適な作品」
「押井守監督によるこの傑作は、まさに唯一無二の作品です。押井監督のスタイリッシュなスローで雰囲気のあるアニメが好きな方は、ぜひご覧になってください。あまり知られていない作品かもしれませんが、アニメ史に残る名作の一つと言っても過言ではないでしょう。本当にお勧めです」
「もしかしたらあなたと私は、はるか昔に亡くなった人の記憶の中にだけ存在しているのかも知れない。それとも実際には誰も存在せず、ただ雨が降っているだけかも知れない。観客は自分で判断するしかありません」
「この映画は商業的な要素を一切排除した、純粋な芸術作品である。だからこそ、アニメーション芸術に真に関心を持つ全ての人に観てもらいたい」
「『天使のたまご』は謎めいていて、ほとんど理解できません。テーマやモチーフは意味ありげでありながらも、ほとんど探求されません。しかし、映像は本当に息を呑むほどスタイリッシュで、それらを全て補って余りあるほどです。目の保養と心の安らぎを期待して観れば、きっとガッカリすることはありません」
「暗く陰鬱でありながら、どこか詩的な魅力も持ち合わせています。このようなアニメーション映画は滅多にありません。驚異的な芸術作品です」
「この映画は二度と味わえない体験で、ストーリーは非常に漠然としているが、私に深い感動を与えてくれた。また、映画全体が何を意味しているのかについて、人によって全く意見が異なるところも興味深い」
「天野喜孝の頭の中を映像化したような作品です。大したことは起きませんが、この物語はビジュアルが全てです」
「本作は主に芸術的な試みとして作られたため、ストーリーは全く意味をなさない。正直、単調で退屈な作品だと思った。71分と短いので助かった」
「『天使のたまご』は観てから何日も私の頭から離れません。実写映画はカメラを数秒向けるだけでテイクが完成しますが、アニメではそうはいきません。特にこの映画は一つ一つのフレームに計り知れない努力が込められているのが分かります。アニメーションのあらゆる部分に意図が滲み出ており、本作ではそれがはっきりと見て取れます」
「正直、何が起こっているのか全く理解できなかった」
「ストーリー性はほぼ皆無で、ビジュアルのみの芸術映画です。しかしながら、他のスタイルばかりで中身がない芸術映画とは異なり、本作には解釈の余地が多く、少なくとも一度は観ることをおすすめします」
「何が起こっているのか分からなくても、この映画は息を呑むほど美しく、独特の雰囲気を醸し出しています。初めて『ファイナルファンタジーVII』をプレイした時を思い出しました」
「セリフが少なく、分かりにくくて退屈でした。この映画にはプロットが必要だったと思います」
「この映画には掘り下げるべき点があまりにも多く、12回見た私でさえ、いまだにメッセージが明確には理解できていません。けれど、それがこの映画の素晴らしさであり、基本的には『2001年宇宙の旅』のようなものです」
「『天使のたまご』は私に様々な感情を与えてくれました。それだけが私にとっての全てです。理解する必要のない芸術作品です」
「映画が始まった瞬間から、これは傑作になるだろうと確信しました。天野喜孝の芸術が存分に発揮されており、彼のデザインと独特のスタイルを愛するなら、心から楽しめるでしょう」
「この映画は好きになるか嫌いになるか、どちらかしかないでしょう。観客にほとんど何も残さないのに、これほど意味深いものを残した映画は、これまで見たことがありません」
「次々と繰り出されるシーンは、視覚的にも聴覚的にも最高の喜びを与えてくれる。まさに傑作」
「物語の意味をどう理解するかはあなた自身です。あらゆる面で隠れた傑作と言えるでしょう」
「『天使のたまご』は観客に忍耐と積極的な関与を求める、挑発的ではあるものの見ごたえのある作品です。何度見ても新たな発見があるため、繰り返し見る価値があります」
「このアニメは私に考えさせ、インスピレーションを与えてくれました。この芸術的な傑作をぜひ見てください!」


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コメント
>押井守監督自身もこの映画が何なのか分からないと発言している。
作ってる人がわかってないまま作ったのなら、見ている人間にわかるわけないよなあ
芸術作品という評価が本文で散見されてるように、アートであって物語ではないのだろうね
その芸術性も、天野喜孝氏の陰鬱で病的な雰囲気が強く出ていて
見終わって清々しい気分になるようなものではなかった
アートワークは大好きなんよ。
アートワークはね。
しかしOVA黎明全盛胎動期とはいえよく予算出たなと今は思う。
まぁ後のパト2ほどこじらせてないから作品としては好きな部類なんよ。
あ、パト2は捻れた娯楽としては好きよ。
犬センスまで行くともうアレだけど。
現代アートの美術館で流したら違和感ないと思う。
美術館で見る絵が動いてるみたいなもんよね
何も説明されないまま終わる部分が多いが、夫々の登場人物や物に別の大きな物語があり、偶然居合わせた時期だけを切り取ったような、後先に長く広い背景がある感じする。
多分元々のそういった部分もあり、それを徹底的にそぎ落としたものなのだろう。
モチーフを見ただけでそれを扱う意味がある程度分かるぐらい、物語の世界に耽溺してきた人、多くの作品を読んできた人には意味が掴める。押井守が感覚を映像に落としてそれで全てを構成した最初で最後の作品。モチーフから読み取れる以上の物語は存在しない。しかし驚くことに、以後の作品でもこの制作方法は継続されており、パトレイバーや攻殻においても背景等でこれを施して遊んでいる。押井守の映画に物語以上に奥行を与えているのはこの手法だ。語らずに語る。幾原作品やまどマギ等の背景ではあからさまにやっている。押井守はよく「自分が用意したネタの10割が伝わることはない、3割ぐらい。それで十分」みたいなことを言っていた。映画をリッチにする方法は物語突き詰めることではなく、余白と見せかけたものに多くのネタを仕込むことだ。と私は理解した。
芸術性は高いけど、観るのが辛くなる作品でもある
ストーリー性が皆無で抽象性、印象性が強い映像がずっと続くだけなんで
ただラストのシーンは感銘した 夢落ちの一種とも取れるが全ては幻、非生物の夢のようにも思えた
芸術点が高く、なおかつストーリーやアクションも秀逸なアニメ映画なら
同じ天野喜孝のキャラデザのバンパイアハンターDがいいよ。