ギャングの長男と法学生の次男
まだティーンエイジャーの三男はどちらの道を選ぶのか?
フランス郊外の過酷な現実を描いた作品
娯楽性は薄いが力作である
役者陣は好演
三兄弟の個性が分かりやすく描かれていた
ギャング同士の抗争
弁論大会
兄弟の絆
クライマックスはなかなか盛り上がった
かなりメッセージ性の強い作品だ
骨のある社会派ドラマが見たい人におススメ
予告編
作品情報
作品名「バンリューの兄弟」(原題Banlieusards)
監督:ケリー・ジェームス、レイラ・シィ
キャスト:ケリー・ジェームス、ジャメ・ディアンガナ、クロエ・ジュアネ、バカリー・ディオンベラ
上映時間:96分
製作国:フランス(2019年)
ざっくりあらすじ
フランスの郊外に住む3兄弟。ギャングの長男と法学生の次男。ティーンエイジャーの三男はどちらの道を選ぶのか?
感想(ここからネタバレ)
フランス郊外の過酷なリアルを突きつけられる
三兄弟
フランス郊外で母親と暮らしているソレイマンとヌムケの黒人の兄弟
ソレイマンは真面目で成績優秀な弁護士を目指す学生
ヌムケは何の目標も持てずに、日々を無益に過ごす高校生だった
二人にはデンバという兄がいるが、彼はギャングで刑務所から出所したばかり
そのため母親から勘当されていた
フランスの郊外はアラブ人や黒人が多く住み、暴力や貧困や犯罪が渦巻いていた
デンバは仲間とドラッグを売りさばき生活していた
しかし、最近は他の売人グループと揉めている
弁護士を目指すソレイマンは、弁論コンテストの決勝まで進んでいた
これに優勝すれば輝かしい未来が約束されている
だが、決勝の相手のリサは強敵だ
ヌムケはデンバによく懐き、学業にも身が入っていなかった
母親とソレイマンは、ヌムケがギャングの道を選ぶのではないかと心配していた
そんなある日、ヌムケが学校で喧嘩をしたと連絡が入り………………
ケリー・ジェームス
この作品で監督、脚本を担当するケリー・ジェームスはフランスのラッパーである
作中では長男のデンバも演じている
本作は元々ケリーの「Banlieusard」という曲から、映画化を企画したものである
ケリー・ジェームスはこの企画をいくつもの映画会社に持ち込んだが、全て断られた
メッセージ性の強い社会派ドラマで、娯楽性に乏しかったからである
またラッパであるケリーに映画作りが出来るのかという点も、問題視されていたようだ
ケリーは「Netflixが最後の選択肢だった」と語っている
三兄弟
この作品の三兄弟はとても個性的に分かりやすく描かれている
長男のデンバはギャングでドラッグを売りさばいている
そのため誠実に生きてきた母親はデンバを勘当した
けれどデンバ自身は情に厚く、家族想いの男だ
郊外で生き抜くには、この方法しか見つけられなかったのだ
母親が倒れて、デンバが病院で彼女の手を握って涙を流すシーンが印象的だった
真面目で優等生の次男ソレイマン
彼は弁護士を目指し、余暇にはボランティアで子供たちに勉強を教えている
荒んだ郊外の環境でも、希望を失わず堅実に生きる強い男だ
そんなソレイマンと弁論コンテストの決勝の相手リサ
貧乏な郊外の黒人と都会育ちの裕福な白人の女性
ライバルでありながら惹かれ合う二人
そんな恋の行方も見ごたえがあった
末っ子で自分の将来がいまだ定まらないヌムケ
二人の対照的な兄
どちらの生き方を選択するのか
この辺りは見ていてとても考えさせられた
反発したり、喧嘩をしたりする兄弟
しかし、心の中では深く相手を想いやっている
そういった兄弟の絆が、とてもよく描かれていたと思う
過酷な現実
タイトルのバンリューとは郊外という意味である
ドラッグ、暴力、人種差別、犯罪
この作品ではフランス郊外の過酷な現実が生々しく描かれる
これこそ監督が描きたかったものだろう
印象的だったのは真面目なソレイマンが道を歩いていただけで、白人の警官に言いがかりをつけられるシーン
ソレイマンは自分の立場と現実を思い知る
心惹かれていたリサ
彼女は白人で裕福な家庭だ
自分とはあまりに違いすぎる
こういった人種間の問題も胸に迫るものがあった
クライマックス
気が重くなる場面の多い本作
だが、クライマックスの弁論コンテストの決勝のシーンは素晴らしかった
お互い心惹かれ合っているソレイマンとリサ
二人が激しく議論をぶつけ合う
どちらも相手に負けていない
その勝負の行方を、思わず固唾を飲んで見守った
コンテストも無事終わり、兄弟も和解し絆が深まった
このまま希望を残して終わるのかと思えた
しかし、不穏な種はすでに蒔かれていた
最後に観客は強烈なパンチを食らう
これが現実なのだと!!
ラストの何も知らないヌムケの瞳が心に残った
まとめ
痛烈なメッセージを持った作品
気軽に見ると打ちのめされるだろう
フランス郊外の現実が対照的な三兄弟を通じて描かれる
見ていて気が重くなるのは確かだが、なかなか見ごたえあり
弁論コンテストの盛り上がりが素晴らしい
そして、強烈なラスト
歯ごたえあるドラマが見たい人にはおススメだ
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/street_flow
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