いい映画である
カタルシスはない
娯楽性も薄い
見終わって、やるせなさが残る
しかし、パワフルな演出で最後まであっという間だった
作り物とは思えない迫力がある
過酷な現実
暴力
少年たちの力関係
意外な展開もあり、目を離せなかった
かなりシビアな作品だが、少年たちの友情が心に残る
楽しい映画ではない
だが、歯ごたえのある作品だ
予告編
作品情報「ブラザー 若者たちの掟」（原題Mon frère）
監督：ジュリアン・アブラハム
キャスト：MHD、ダレン・ミュゼレ、アイサ・マイガ、ジャリル・レスペール、ユースフ・グェイェ
上映時間：96分
製作国：フランス（2019年）
ざっくりあらすじ
高校生のテディは父親殺害の容疑で捕まった。テディは青年保護施設に送られたが、そこは過酷な環境だった………………
感想（ここからネタバレ）
少年たちが自然で演技だとは思えない
施設へ
高校3年生のテディは、父親殺害の容疑で拘束された
日頃から暴力をふるっていた父
テディとアンディの兄弟は、いつも父に怯えて生きてきた
全ては幼い弟を守るためだった
まだ未成年のテディは、青年保護施設へと送られた
そこは同じように罪を犯した少年たちが閉じ込められていた
普通の高校生だったテディは、そんな環境に馴染めず、いつも1人でいた
そんなテディに目をつけたのが、そこのリーダー的存在のエンゾだった
エンゾは危険で暴力的な男で、施設の指導員にも反抗的だった
テディを気に入らないエンゾは、ことごとく仲間と共に嫌がらせをしてきた
ますますテディは施設で、息のつまるような暮らしを強いられた
そんなある日、モーという男が新しく施設に入ってきた
同じ黒人ということで、テディとモーはすぐに打ち解けた
腕力に自信のあるモーは、やがてエンゾと敵対するようになった
どちらがここのボスにふさわしいか？
テディは2人の抗争には関わらないようにしていたのだが………………
テディ
ラッパーであるMHDが演じる
暴力的な父親から弟を守るために捕まったテディ
不良少年たちが牛耳っている施設
そこに放り込まれた普通の少年を、繊細に演じている
家を出て行った母親
父親からの虐待
幼い弟
テディはその歳で抱えきれないものを背負っていた
そんなテディが入れられた保護施設は過酷な環境だった
力で何でも思い通りにしようとする少年たち
暴力がものをいう世界
テディはそんな中で押しつぶされそうになるが………………
青年保護施設
施設の不良少年たちの演技が凄い
というか演技に見えない
凄みのある振舞い
自然体
ドキュメンタリーかと思うほどだ
実際にもこんな感じなのだろうと、思わせるリアリティがある
また少年たちのパワーバランスに目を見張った
リーダー的存在のエンゾ
テディはエンゾの不興を買い、痛めつけられる
しかし、新しく入ってきた黒人のモー
モーは腕力では誰にも負けなかった
立場が逆転する
今度はエンゾが皆からいじめられる側に
モーが新しいボスになったのだ
この展開は衝撃的だった
モーは同じ黒人ということで、テディには優しかった
しかし、モーのエンゾへのあまりの仕打ちに、テディは見ていられなくなる
友情
エンゾのことを助けたテディ
2人の間に友情が生まれる
これは全く予想していなかった
モーではなく悪役と思っていたエンゾと、友達になるとは
2人は施設を脱走する
ずっと施設に閉じ込められていた2人
外の世界は開放的だった
テディは弟のアンディも連れて、母親がいるアムステルダムに3人で向かう
ここはまるでロードムービーの趣き
自由を満喫するテディとエンゾ
楽しいシーンなのだが、このまま上手くはいかないだろうという不吉な予感をはらんでいる
エンゾのキャラクターが秀逸
前半は狂犬のようにテディに敵意を向けていたエンゾ
それが友人になってからは笑顔を見せ、ためらうテディに「母親に会ってこい」と背中を押してくれる
2人の友情には心が暖かくなった
父親殺害
だが、これはハリウッド映画ではない
簡単にハッピーエンドにはしてくれないのだ
ラストに明かされる衝撃の事実
父親を殺したのはテディではなかった
兄を守ろうとしたアンディだったのだ
弟の罪を背負い込んだテディ
ラスト、追い詰められたテディは地面に泣き崩れる
何の救いもなく映画は幕を閉じる
やりきれない思いだけが強く残る
残酷な現実
そんな世界で少年たちは生きている
安易なハッピーエンドにしない真摯さが、この作品にはある
まとめ
息苦しい作品だ
過酷な現実を生きる少年たち
だからこそ、彼らのつかの間の煌めきが強く胸に残る
少年たちと真摯に向き合った良作である
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