第95回アカデミー賞で10部門11ノミネートの話題作
コインランドリーを経営する疲れ果てた主婦・エヴリンは、何故か全宇宙を救うために戦う羽目になり…………
ミシェル・ヨーが素晴らしい演技とアクションで新境地
SF、カンフー、コメディ、ヒューマンドラマ、哲学と何でもありのパワフルな一作!!
奇想天外なストーリーに、くだらないギャグ
アカデミー賞最有力というので見に行ったら、最初は戸惑った
とにかく何でもありの自由すぎる作風
ストーリーも難解で、ついていくのが大変だった
まさに権威ある賞とは真逆に位置する作品だ
だが、面白い!!
かなり大爆笑した
そしてクライマックスは怒涛の展開で、不覚にも涙してしまった
ミシェル・ヨーは素晴らしい存在感
カンフーもバッチリ決まっていた
また頼りない夫を演じたキー・ホイ・クァンが見事
20年のブランクなど全く感じさせない
天才子役はいまだ天才のままだった
とにかく映画史に残る革新的な作品
癖の強い映画だが、ぜひ見ておくべきだろう
予告編
作品情報
作品名「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(原題Everything Everywhere All at Once)
監督:ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート
キャスト:ミシェル・ヨー、ステファニー・スー、キー・ホイ・クァン、ジェニー・スレイト、ハリー・シャム・Jr、ジェームズ・ホン、ジェイミー・リー・カーティス
上映時間:139分
製作国:アメリカ(2022年)
ざっくりあらすじ
経営するコインランドリーの税金問題、頑固な父親と反抗期の娘、優しいが頼りにならない夫と、普通の主婦・エヴリンは疲れ果てていた。そんなエヴリンが何故か全宇宙を救うために、戦う羽目になり…………
感想(ここからネタバレ)
チケットを買う時、すぐにタイトルが出てこなかった
さすがに長すぎ…………
積み重なったトラブル
エヴリン・ワンは中国からの移民女性
夫のウェイモンド・ワンと共に、コインランドリーを経営している
コインランドリーの税金問題
頑固な父親の介護
反抗的な娘ジョイ
問題が山積みで、エヴリンは疲れ切っていた
ウェイモンドは優しいが、頼りにならない
旧正月のパーティーも重なり、エヴリンは忙しさで心の余裕を失っていた
エヴリンがウェイモンドと父親と、国税庁を訪れた時だった
エレベーターの中で、ウェイモンドの態度が豹変した
彼が言うには、別の宇宙(ユニバース)のウェイモンドが乗り移っているらしい
自分がいるアルファ・バースでは統計的にあり得ない奇妙な行動をすることで、別次元の自分にアクセスできる「バース・ジャンプ」技術を開発した
今、マルチバースは危機に瀕している
全ての宇宙を経験し、強大な力を手に入れたジョブ・トゥパキによって破壊されようとしているのだ
それを止められるのはエヴリンだけだ
わけも分からず別次元の自分とアクセスしたエヴリンは、カンフーの達人となった
こうしてエヴリンは不本意にも、全宇宙を救う使命を負わされたのだが…………
作品解説
監督は「スイス・アーミー・マン」のダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート
通称ダニエルズ
最初はジャッキー・チェンを主役に考えられていたが、ミシェル・ヨーに変更になった
ダニエルズはミシェル・ヨーに惚れ込み、主人公の名前をミシェルにしようとまでしたが、それは彼女が嫌がりエヴリンという名前になった
VFXのシーンは全て、ダニエルズ含む9人のチームで行われた
その中に1人もVFXの専門家がいなかったため、彼らはネットで独学で学んだ
プロデューサーのジョナサン・ワンのインタビューでは、映画の製作費はわずか1,430万ドル
これは同じマルチバースを扱った映画、「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」の約1/14
ダニエルズは「マーベルのケータリング費用で映画を作った」とよく冗談を言った
エヴリン・ワン
コインランドリーを経営する中国からの移民女性
税金、反抗期の娘、父親の介護と問題が山積みで、心に余裕をなくしている
そのため、夫に対しても冷たい態度
ある日、全宇宙を救う救世主になれと言われるが…………
演じるのは「シャン・チー テン・リングスの伝説」「グリーン・デスティニー」のミシェル・ヨー
個人的には「ポリスストーリー3」の走る列車にバイクで飛び移るアクションが、鮮烈に記憶に残っている
宇宙を救う救世主であり、1人の妻で母親
本作はミシェル・ヨーにとって新境地
カンフーの冴えも相変わらず素晴らしかった
アカデミー賞主演女優賞ノミネートも納得
ジョイ・ワン
エヴリンの娘
女の子のベッキーと付き合っているが、そのことをエヴリンに快く思われていない
そのため母親へ反抗的
強大な力をつけ、ジョブ・トゥパキとして多元宇宙の脅威となるが…………
エヴリンの最大の敵となるジョイ
演じるのは「シャン・チー/テン・リングスの伝説」のステファニー・スー
ウェイモンド・ワン
エヴリンの夫
優しいが頼りない
妻のエヴリンとの関係に悩み、離婚届を用意しているが…………
演じるのは「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」「グーニーズ」のキー・ホイ・クァン
約20年ぶりに俳優として復帰
当時は子役として、鮮烈な印象を残したキー・ホイ・クァン
それだけのブランクがあって、演技は大丈夫なのか?
見る前はそんな不安があったが、めちゃくちゃ素晴らしい演技
キー・ホイ・クァンの才能は本物だった
スタント・コーディネーターをしていたこともあり、カンフーシーンも見事だった
ちなみに本作で俳優復帰をする時、交渉を請け負ったのはジェフ・コーエン
今は俳優を辞めて弁護士をしているが、「グーニーズ」のチャンク役として有名
グーニーズの友情は続いていた!!
キー・ホイ・クァンはNetflix映画「オハナ」にも出演している
マトリックス
カンフー、スキルの習得、指示を送ってくるオペレーターたち
本作は「マトリックス」の影響を色濃く感じさせる
監督たち自身もインタビューで、自分たちのマトリックスを作りたかったと語っている
ちなみにクライマックスで、エヴリンとジョブ・トゥパキが地下鉄のプラットホームで戦うシーンは、明らかにマトリックスへのオマージュである
マルチバースを扱った作品は、他に「スパイダーマン:スパイダーバース」がある
この作品を見て監督たちは「自分たちのやりたかったことを、先にやられた!」と本気で悔しかったそうだ
多元宇宙
あの時、あの選択をしていたら…………
誰もが一度は考えることがあるだろう
女優になった自分、シェフになった自分、歌手になった自分、カンフーの達人になった自分
エヴリンは様々な”別の自分”の次元を垣間見る
それに比べて、しがないコインランドリーを経営して、税金や娘や父親に悩む自分
隣の芝生は青く見えるもの
エヴリンは自分の人生は間違いだったと感じるようになる
だが、様々な経験を通じて、エヴリンは気づく
優しく自分の欠点を補ってくれる夫
心配ばかりさせるが愛する娘
コインランドリーの顔なじみのお客さんたち
自分の人生にもいいところがたくさんある
そのことを忘れそうになっていた
本作では全宇宙の危機と家族の危機を、同等に描いている
最後の夫や娘への愛に、エヴリンが気づく展開は感動的
痛快さ
低予算のインディーズ映画
監督はまだキャリアの浅い2人
主演は高齢のアジア人女優
アクションやくだらないギャグ満載
そんな権威とは無縁に思える作品が、アカデミー賞最多ノミネート
他にも様々な賞レースを席巻している
これほど痛快なことはない
その痛快さは本作のテーマにも通じている
しがない普通の主婦が全宇宙を救う
映画の内容も現実でも、まさに痛快さを体現したような作品だ
まとめ
恐ろしくパワフルで自由
クライマックスのイメージの奔流も凄まじかった
押さえるところはきっちり押さえた脚本の完成度も高い
間違いなく映画の可能性を押し広げた一作だ
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/everything_everywhere_all_at_once
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/384594
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