Netflixオリジナル映画
近未来のロンドン、イジーは”ザ・キッチン”と呼ばれる古びた団地に住んでいたが、ベンジーという少年と出会い…………
2040年のロンドンを舞台にしたディストピア映画
派手なSF要素は少なく、じっくりと人間ドラマが描かれる
「ゲット・アウト」などの俳優ダニエル・カルーヤがキブウェ・タバレスと共同で監督
SF作品だが地味で静かな作風
孤独な男・イジーが出会った母親を失った少年・ベンジー
2人が少しずつ心を通わせていくドラマは見ごたえがあった
しかし、ディストピア映画ということで、派手なアクションなどを期待するとガッカリするだろう
かなり硬派な内容の作品
描かれている未来のロンドンもリアルだった
俳優陣も素晴らしい
これがデビュー作となるダニエル・カルーヤの演出力は見事
今後が期待できそうだ
地味でとっつきにくいところはあるが、強く印象に残る作品である
予告編
作品情報
作品名「ザ・キッチン」(原題THE KITCHEN)
監督:キブウェ・タバレス、ダニエル・カルーヤ
キャスト:ケイン・ロビンソン、ジェダイア・バナーマン、ホープ・イクポク・Jr、イアン・ライト、テイジャ・カブス、デミー・ラディポ、ヘンリー・ローフル
上映時間:108分
制作国:イギリス、アメリカ(2024年)
ざっくりあらすじ
2040年、イジーはロンドンに残された数少ない団地”ザ・キッチン”で暮らしていた。ザ・キッチンから抜け出すことが、イジーの目標だった。そんな時、ベンジーという名の少年と出会ったことで、イジーの生活に変化が生まれ…………
感想(ここからネタバレ)
新たな団地映画の良作が誕生!!
「ザ・キッチン」
2040年のロンドン、住宅価格の上昇、労働のコンピューター化により、貧富の格差は激しくなっていた
ザ・キッチンはロンドンに残された数少ない団地のひとつ
下層階級の人々は立ち退きを拒否して、ザ・キッチンに住み続けていた
そのため水道は止められ、物資の配給も滞っていた
団地の過激なグループは、トラックを襲撃し荷物を強奪し、住民に配った
イジーはザ・キッチンの住人
不愛想で協調性がなく、1人でいることを好んだ
いつかこのクソ溜めを抜け出すことが、イジーの目標だった
ある日、イジーは勤務している葬儀場で、トニ・クラークという面識のある女性の名前を見かけた
トニは亡くなっており、ベンジーという息子が1人残されていた
帰ろうとしたイジーは、ベンジーに声をかけられた
ベンジーはイジーが、自分の父親ではないかと疑っていた
イジーは違うと答えた
翌日、ベンジーがイジーを訪ねて、ザ・キッチンへやってきた
2日間だけ泊めてくれという
仕方なくイジーは、ベンジーを泊めてやったが…………
作品情報
本作は「ゲット・アウト」や「ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償」の俳優ダニエル・カルーヤの監督デビュー作
キブウェ・タバレス監督、プロデューサーのダニエル・エマーソンとダニエルが理髪店で交わした会話が、本作制作のきっかけだったとのこと
制作には8年がかけられた
イジー
ザ・キッチンに住む男
不愛想で協調性がなく、他人と距離をとっている
いつかザ・キッチンから高級アパートへ、移り住むことを目指しているが…………
演じるのはドラマ「トップボーイ」などのケイン・ロビンソン
孤独な男の内面を見事に演じている
ベンジー
母親を失った少年
自分の父親はイジーじゃないかと疑っている
イジーを追って、ザ・キッチンへやってくるが…………
演じるのはジェダイア・バナーマン
複雑に揺れ動く少年の心情を巧みに演じ、素晴らしい存在感だった
団地映画
本作の舞台はザ・キッチンと呼ばれる団地
貧富の差が広がった未来のロンドン
低所得者は団地に住むことを余儀なくされているが、立ち退きを迫られている
警察の監視ドローンが上空を飛び交い、水道や物資も止められて絶望的な状況だ
しかし、ザ・キッチンの人々はエネルギーに満ちている
活気があり、皆でダンスを楽しみ、一部の過激なグループは街で物資を強奪してくる
彼らは警察や政府に反抗し、強く団結していた
本作を見て思い出したのがフランス映画「アテナ」
一人の少年が殺された事件をきっかけに、アテナ団地では暴動が勃発
扇動しているのは少年の兄カリムだった
軍人のアブデルは弟を止めようとするが…………
エネルギッシュな団地映画の傑作
特に冒頭の警察署襲撃シーンの臨場感は凄まじい
対立する兄弟のドラマも見ごたえがあった
本作と色々と共通点はあるが、エンタメ性ではこちらの方が上
ディストピア
本作はSF映画に分類されるが、CGなどは極力使われていない
あくまで人間ドラマがメイン
この辺りは監督のセンスが感じられた
その代わり、地味な印象の作品となっている
正直、暴動シーンなどは少し物足りなく感じた
「アテナ」の印象が強かったからかも知れない
ドラマチックな展開も、もう少し見たかったところだ
親子
イジーとベンジー
共に暮らすことになる2人
他人に冷たく不愛想だったイジーが、少しずつベンジーに心を許していく姿が心地よかった
ささやかな変化を表現するケイン・ロビンソンの演技が素晴らしい
ベンジーと心を通わせていくイジー
だが、家族として彼を受け入れる覚悟ができない
ずっと孤独に生きてきたイジーには、家族とはどういうものか分からないからだ
そして、イジーは最悪の決断をしてしまう
そんな父親として不器用なイジーの姿は、とてもリアルだった
急ぐ必要はない
少しずつ歩み寄っていけばいい
最後に和解する2人
希望と不安が入り混じる結末は、とても印象的
余韻を残すラストとなっている
まとめ
ダニエル・カルーヤの監督デビュー作
地味だがクォリティが高い
不器用な親子のドラマは見ごたえがあった
俳優陣のレベルも高い
とっつきにくいところはあるが、じっくり楽しめる良作だ
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/the_kitchen_2023
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/392854
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