Netflixオリジナルのフランス映画
シングルマザーのヴィルジニーはイナゴを養殖していたが、血を餌として与えることで上手くいくことに気付き…………
イナゴに襲われるパニックホラー
社会派ドラマとホラーが高いレベルで融合している
美しい田舎町
1人で子供たちを育てる母親の愛情
厳しいフランスの農家の現実
B級ホラーかと思ったら、凄まじい完成度のドラマだった
特に前半はドキュメンタリーを見ているかの様だった
登場人物の自然な演技が素晴らしい
シングルマザー役のスリアン・ブラヒムの演技は、特に見事だった
そして後半のイナゴの恐怖
群れで襲ってくるイナゴが心底恐ろしかった
虫が嫌いな人は注意が必要だ
こけおどしではない恐ろしいホラー
見る人を選びそうだが、優れた作品なのは間違いない
予告編
作品情報
作品名「群がり」（原題La nuée）
監督：ジュスト・フィリッポ
キャスト：スリアン・ブラヒム、ソフィアン・カーメ、マリー・ナルボンヌ、ラファエル・ロマン、ステファン・カスタング、ヴィクトル・ボネル
上映時間：101分
製作国：フランス（2020年）
ざっくりあらすじ
シングルマザーのヴィルジニーはイナゴを高タンパク食品として養殖しているが、なかなか成果が出なかった。だが、ひょんなことからイナゴに血を与えると、上手くいくことに気付いて…………
感想（ここからネタバレ）
子供の頃、イナゴの佃煮が食卓に出て、食べられなかった思い出が蘇った…………
異変
ヴィルジニーは夫を亡くし、1人で息子のガストンと娘のローラを育てなければならなかった
そのためにヴィルジニーはイナゴの養殖を始めた
イナゴは肉よりもタンパク質が豊富だ
いずれ訪れる食糧危機に不可欠な存在になる
だが、事業は上手くいかなかった
思うようにイナゴが繁殖しないのだ
借金もかさみ、このままでは子供たちを養えない
ヴィルジニーは追い詰められていた
そんな時、ひょんなことからヴィルジニーは腕に傷を負ってしまう
滴る血
それにイナゴが群がってきた
驚いてヴィルジニーはイナゴを払いのけた
ところがそれをきっかけに、イナゴが活性化した
サイズも一回り大きくなり、卵を産み、あっという間に繁殖していった
ヴィルジニーは時々、イナゴに自らの血を与えるようになった
イナゴの品質は評判になり、取引先も増えた
事業は軌道に乗ったのだ
もっともっと血が必要だ
やがてイナゴの数が増えて、自らの血だけでは足りなくなり…………
作品解説
監督のジュスト・フィリッポは本作がデビュー作
本作は2020年のカンヌ映画祭の国際批評家週間に選ばれた
フランス、中国、スペインを除く国ではNetflixで配信された
ヴィルジニー
夫に先立たれたシングルマザー
子供たちを養うために、イナゴの養殖に手を出すが上手くいかない
やがてイナゴに血を与えると、上手くいくことに気付く
事業が軌道に乗り出すと、仕事に没頭するようになり、それが恐ろしい惨劇を生む
演じるのはスリアン・ブラヒム
子供たちへの愛情深い表情と、イナゴに取り憑かれる狂気の姿が見事だった
ローラ
ヴィルジニーの10代の娘
学校でイナゴのことで馬鹿にされている
次第にイナゴにのめり込んでいく母親に、不安を抱くようになり…………
演じるのはマリー・ナルボンヌ
自然な演技が素晴らしかった
生物パニック映画
血の味を覚えたイナゴが、人間を襲ってくる
本作は生物パニック映画と言っていいだろう
「ジョーズ」、「ピラニア」、「アラクノフォビア」
多くの作品がある
本作を見て思いだしたのは、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作「鳥」
社会派ドラマ
イナゴが人間を襲う
見る前は完全にB級パニックホラーだと思い込んでいた
その予想は大きく外れた
美しい田舎町を捉えた映像
役者たちの自然な演技
まるでドキュメンタリーでも見ているかの様だった
名作「ジョーズ」を撮る時、スティーヴン・スピルバーグは巨大ザメが襲ってくるという荒唐無稽の物語を嘘っぽくしないため、役者にはリアルな演技を徹底させたという
本作も役者の演技が非常にリアル
そのため真に恐ろしい作品となった
また前半ではフランスの農家の現実
わずかな収入
かさむ借金
過酷な労働
ほとんど社会派ドラマ
アカデミー賞でも獲ってしまいそうな勢いだった
イナゴ
イナゴ、イナゴ、イナゴ
序盤からこれでもかとイナゴが描かれる
最初は無害だったイナゴ
それが血の味を覚え、人間を襲うようになる
虫嫌いの人には耐えられないかも知れない
普通にトラウマ級
絶えず聞こえる羽音
群れをなして襲ってくる姿
見ていて不気味だった
あと犬好きの人も注意が必要
狂気
女手一つで子供たちを育てる母親ヴィルジニー
愛情深く、子供たちのために身を粉にして働いている
ところがイナゴの養殖は上手くいかない
ヴィルジニーは追い詰められる
イナゴに血を与えると、効果があると気づいたヴィルジニー
最初は自らの血を与える
その姿は痛々しい
軌道に乗り、拡大していく事業
どん底から這い上がったのだ
ヴィルジニーは仕事にのめり込んでいく
そのためには血が足りない
禁断の手段をとるようになるヴィルジニー
その暴走する姿に戦慄した
誰も彼女を止められない
そして、それは恐ろしい惨劇につながっていく…………
おぞましい物語だが、どこか美しくもあった
それは根底に母親の愛情が流れているからだろう
ホラーなのに芸術作品のようでもあった
まとめ
フランスのホラー映画
予想以上の完成度
ドラマ、演出、演技と全てハイレベル
一見、ただのB級映画だが、実に見事な作品である
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/the_swarm_2020
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/378160
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