映画「アド・アストラ」感想と解説(ネタバレあり) 宇宙の果てで見つけたのは!?

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宇宙を舞台にした壮大なドラマ
クォリティは保証付き
ただ感動作を期待して行くと戸惑うかも知れない
描かれるのは遥かな宇宙への旅路だが、そこにはつねに孤独と死がつきまとう
ブラッド・ピットは素晴らしい演技を披露
孤独な男の複雑な内面を静かに演じる
スケールの大きな映像も見事
本当に宇宙旅行をしているような気分を味わえる
見せ場や衝撃的なシーンも多い
本格SFドラマとして文句なし
いかにもハリウッドな娯楽作品ではない
壮大なスケールの私小説のような作品だ
主題はあくまで1人の男の心の旅路
その点で好みが分かれるかも知れない
見ごたえあるSFドラマを求める人にはおススメ!!


予告編

映画『アド・アストラ』予告編 9月20日(金)公開

作品情報
作品名「アド・アストラ」(原題Ad Astra)
監督:ジェームズ・グレイ
キャスト:ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ
リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランド
上映時間:123分
製作国:アメリカ(2019年)

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ざっくりあらすじ

太陽系の彼方で行方不明になっていた宇宙飛行士の父が生きていると知らされたロイ。父は危険なミッションに挑んでいたというが………………

感想(ここからネタバレ)

久々の本格SFドラマ
通好みの作品である

宇宙の彼方へ

近未来、人類は謎の電力嵐サージの脅威に苦しめられていた
伝説的な宇宙飛行士H・クリフォード・マクブライドの息子ロイ・マクブライドは、父に憧れて自分も宇宙飛行士になった
だが、父は26年前に地球外生命体を探索する「リマ・プロジェクト」のために旅立ち、16年前に太陽系の彼方で行方不明になった

ある日、ロイは宇宙軍に呼び出された
伝えられたのは衝撃的な内容だった
ロイの父、クリフォードは宇宙の彼方で生きている
そして、世界に被害を及ぼしているサージは、父が原因なのだと
このままでは被害は拡大し、人類は滅びる
軍はロイに火星に行って、そこから海王星周辺にいる父にメッセージを送るように要請した
これは極秘任務で、誰にも内容を明かしてはならない

ロイは一般旅行者として、まずは月まで行くことになった
父の旧友のトム・プルーイット大佐が監視として同行した
大佐の話では父は地球外生命体の探索に異様な執念を見せていたという
それはロイの知らない父の姿だった

月に到着したロイたちは基地に向かう途中、武装した集団に襲撃される
何とか基地に辿り着いたが、多くの犠牲者が出た
大佐も不整脈を起こして倒れた
別れ際に大佐はロイに、あるデータを渡した
そのデータに入っていたのは、軍によるロイの父の抹殺計画だった………………

インターステラー

この「アド・アストラ」を見て思い出したのは、クリストファー・ノーラン監督のSF大作「インターステラー」
壮大で見ごたえのあるSFドラマだった

地球の危機
親子のドラマ
宇宙への旅路

この2作には共通点が多い
だが、アプローチの仕方はかなり異なっている
「インターステラー」は物語が俯瞰的に描かれる
「アド・アストラ」は焦点がロイから離れることはない
壮大なスケールなのに、あくまで主人公個人の物語を描いているのである
まるで一人称小説のように

また親子の絆を感動的に描いている「インターステラー」に比べて、「アド・アストラ」は冷徹である
むしろ親子というものの業の深さを考えさせるものとなっている
そういう意味では、とっつきにくい作品だといえるかも知れない

ブラッド・ピット

英雄的宇宙飛行士H・クリフォード・マクブライドを父に持つロイ・マクブライド
父に憧れて自分も宇宙飛行士になった
だが、父は16年前に太陽系の果てで行方不明になった
自分は父に見捨てられた
ロイが抱いた感情は怒りだった
その感情を押し殺し、残ったものは心の痛みだけだった
ロイは表面上は上手く周囲に合わせたが、他人に心を開けなくなった
妻のイヴはそのことを指摘して出て行った
孤独な方が気楽だ
ロイは他人に関心が持てなくなった

ブラッド・ピットは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に続いて、素晴らしい演技を披露

クェンティン・タランティーノ監督の最新作 ある意味、今年最大の注目作といっていい さて、肝心の作品はというと……………… やっぱり...

感情を表に出さず、優秀だが深い孤独を抱えたロイを静かに演じている
火星で軍が用意したメッセージを無視して、自分の言葉で父に語りかける場面
これまでどんな場面でも動揺を見せなかったロイが、初めて感情を吐露して涙を流す屈指の名場面だった
ブラッド・ピットは男らしさと弱さを同時に体現できる名優となった

驚異の映像

冒頭の宇宙アンテナの作業中にサージに襲われ、ロイが何千メートルも下の地面に落下するシーン
いきなり凄まじい場面から映画は幕を開ける
完全に度肝を抜かれた
また月面での武装集団の襲撃
見たこともないような驚異のスペクタクルシーンとなっている
こういった見せ場がいくつも用意されている

監督は宇宙のリアルな描写にこだわった
この作品は未来が舞台だが、空間にタッチパネルが現れるような超技術は登場しない
目に映るものほとんどが、現代の延長線上のものである
そのため宇宙旅行もどこか懐かしくノスタルジックさを感じさせる
未来が舞台の作品はどこかマンガチックで、自分とは無縁の世界と感じがちだが、「アド・アストラ」ではしっかりした地続き感がある
そのためキャラクターのドラマに集中することが出来た

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つきまとう死

ロイが同乗した火星に向かう宇宙船が遭難信号を受ける場面がある
船長とロイは宇宙ステーションに乗り込む
そこで実験用動物に船長が襲われる
ロイは船長を宇宙船に連れ帰るが、彼は死亡する

最初はこのシーンの意味が分からなかった
本筋と全く関係ないではないか
なぜわざわざこんなシーンを挿入したのか?
しかし、考えて見るとこの作品では、冒頭からいくつものが描かれている
宇宙アンテナから墜落する技術者たち
月面での海賊との死闘

そしてもっとも極めつけが中盤のシーン
軍はロイの父を抹殺するため、核兵器を搭載した宇宙船を火星から発射する
ロイは父親と対峙するため命令を無視して、その宇宙船に乗り込む
乗っていたクルーは火星に行く時と同じメンバーだ
彼らは軍の命令に従い、ロイを始末しようとする
ロイは図らずも彼らを全員死なせてしまう

衝撃的なシーンである
不可抗力だったとはいえ、自分の目的のため顔なじみのメンバーを死なせてしまったのだ
それまでは、まだ最後には親子の感動的な再会が描かれるのではないかと期待していた
だが、そんな希望のある旅ではない
そのことをこのシーンでまざまざと見せつけられた気がした

再会

数週間の長い孤独な旅路の末、ロイは父親のいる宇宙ステーションに辿り着く
そこにはいたるところに死体が浮遊していた
そしてロイはついに父親と再会する
だが、そこにいたのは憧れだった父ではなかった

「地球外生命体を見つけ出す。それ以外はどうでもいい。お前のことなど、思い出したこともなかった!!」

父は妄執にとらわれていた
長い宇宙の旅路でストレスに耐えきれなくなった他のクルーは、暴動を起こした
父は彼らを殺し、それからずっと長い間、一人きりだったのだ

憧れだった父は、ロイには哀れな存在に見えた
他人を必要としない
そこにあるのはだった
父の姿にロイは自分自身を見た

「一緒に地球に帰ろう」

けれど父は孤独な死を選んだ
親子はとうとう分かり合えなかった
宇宙ステーションは爆破した
今まで孤独を好んで生きてきたロイ

「もう孤独はたくさんだ………………」

ロイは地球へ帰還した
愛する人がいる地球へ

まとめ

最後には感動的な親子の再会が描かれる
そう思って見ると、冷水をぶっかけられるだろう
苦い作品である
静かな演出も多く、苦痛に感じる人もいるかも知れない
しかし、爽快なイベントムービーが主流を占める中、これほど見ごたえのあるSFドラマが現れたことは素晴らしい
またブラッド・ピットの演技は彼の経歴で最高のもので、ファンなら絶対に見ておくべきだろう
楽しい映画ではない
つねに息苦しさがつきまとう
上質なドラマを求める人なら、満足できるだろう


Ad Astra (2019) on IMDb


Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/ad_astra
allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=368860

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