劇場公開と同時にNetflixで配信
取り壊しの進む団地に小学生たちが忍び込むと、何故かその団地が海を漂流し始め…………
子供たちのサバイバルとひと夏の冒険
切なくもどこか懐かしい良質なジュブナイル
「ペンギン・ハイウェイ」「泣きたい私は猫をかぶる」を手がけたスタジオコロリド制作の長編アニメ映画
団地が海を漂流するというインパクトが凄い
子供たちはみな個性的で、よく描かれていた
姉弟のように育った夏芽と航祐
そんな仲の良かった2人がギクシャクするようになった経緯が、次第に明かされていく
ファンタジックな冒険ものだが、内容はけっこうシビア
食糧問題や仲間たちの衝突も描かれる
2時間はちょっと長く感じた
けれどクライマックスは感動的で盛り上がった
現代が舞台なのに、どこかノスタルジックな気分にさせる一作
良質な日本映画として、チェックしておきたい作品だ
予告編
作品情報
作品名「雨を告げる漂流団地」
監督：石田祐康
キャスト：田村睦心、瀬戸麻沙美、村瀬歩、山下大輝、小林由美子、水瀬いのり、花澤香菜
上映時間：120分
製作国：日本（2022年）
ざっくりあらすじ
取り壊しの決まった団地に忍び込んだ小学生たち。ところが不思議な現象によって、その団地が海を漂流し始める。子供たちは無事に帰ることが出来るのか？
感想（ここからネタバレ）
タイトル通り団地が本当に漂流する…………
鴨の宮団地
小学6年生の航佑と夏芽は鴨の宮団地で、まるで姉弟のように育った
何をするにも一緒で、サッカークラブでもコンビを組んだ
周りからは夫婦とからかわれた
しかし、航佑の祖父・安次が亡くなったことをきっかけに、2人の関係はギクシャクし始めた
夏芽はクラブにも来なくなった
鴨の宮団地の取り壊しが決まった
航佑と夏芽はそれぞれ別の場所で暮らし始めた
ますます2人の間は疎遠になっていった
友達の譲と太志が航佑を、鴨の宮団地に忍び込もうと誘った
「お化け」が出るという噂があるというのだ
航佑は気が乗らなかったが、2人に付き合った
取り壊しが決まり、もう誰も住んでいない団地
ところがそこで航佑たちは夏芽と遭遇した
夏芽は何度も団地に忍び込み、1人で過ごしていたのだ
そんな時、航佑たちの姿を見かけたクラスメイトの依菜と珠理も、団地に入ってきた
航佑は夏芽から団地に住むという謎の少年「のっぽ」について聞かされる
その少年がお化けの正体なのか？
すると突如、航佑たちは不思議な現象に巻き込まれる
気づくと団地は海を漂流していた
周りには水平線しか見えない
子供たちは何が起きたか分からず、パニックに陥ったが…………
作品解説
本作は「ペンギン・ハイウェイ」「泣きたい私は猫をかぶる」に続くスタジオコロリドの長編アニメーション映画第3弾
監督は「ペンギン・ハイウェイ」の石田祐康
2022年9月16日から劇場公開と同時にNetflixで配信
熊谷航祐 CV.田村睦心
小学6年生
夏芽とは鴨の宮団地でまるで姉弟のように育った
サッカークラブでは夏芽とツートップでフォワード
だが、団地の取り壊しと祖父の死がきっかけで、ギクシャクするようになる
素直になれない性格だが、いざという時はリーダーシップと行動力を見せる
意地っ張りで、夏芽に対して心ないことを言ってしまう
見ていてイライラさせられるところが、妙にリアルだった
しかし、様々な困難に立ち向かう内に成長していく
兎内夏芽 CV.瀬戸麻沙美
航佑と団地で育った幼馴染
周りの女子から格好いいと思われている
航佑の祖父・安次を”やすじい”と呼んで慕っていた
大好きな安次の死と団地の取り壊しを受け入れることが出来ずに…………
夏芽は何に苦しんでいるのか
航佑にはそれが理解できない
少女の複雑な心情が少しずつ解き明かされていくさまが、本作最大の見どころ
仲間たち
大柄で穏やかな性格の譲
もっとも子供っぽく元気な性格の太志
勝気で航佑に気があり夏芽をライバル視する令依菜
令依菜の親友で面倒見のいい珠理
不思議な現象に巻き込まれ、団地で漂流することになった仲間たち
皆が個性的で、見ていて楽しかった
ファンタジー
団地が海を漂流
かなり突飛な発想だ
思い出すのはやはり楳図かずおの「漂流教室」
実写映画やドラマにもなった名作だ
こちらは小学校の校舎が荒廃した未来世界に飛ばされる話だった
主人公が小学6年生というのも共通している
やはり中学生では何かが違うのだろう
本作に登場する謎の少年「のっぽ」
この少年が現実とファンタジーとの橋渡し役となっている
団地に昔から住んでいるというこの少年は何者なのか？
その正体が主人公たちが巻き込まれた不思議な現象の謎を探る手掛かりとなる
サバイバル
本作は子供たちが主役のファンタジーだが、サバイバル場面はなかなかシビア
わずかな食糧
度重なるアクシデント
次第に募っていく絶望
仲間たちの諍い
子供たちが身も心も未成熟な存在として描かれているのがリアルだった
しかし、様々な困難を乗り越え、仲間の絆が深まっていく展開は王道で爽快
郷愁
本作は現代が舞台だが、ノスタルジーを感じさせる場面が多い
団地の取り壊し
大好きな祖父の死
変わっていく街
愛する人や場所との別れ
夏芽はそれを受け入れることが出来ず、取り壊される団地に忍び込んで思い出に浸っている
そんな夏芽の執着心が、今回の騒動の原因だった
別れを受け入れて、大好きな人とこの先も生きていきたい
そうして夏芽は前に進むことが出来た
少女の複雑で繊細な心情が深く描かれ、良質なジュブナイルとなっている
まとめ
どこか懐かしい気分を味わえる作品
子供たちの心情に寄り添った脚本と演出がよかった
少し大林宣彦作品も思い出させた
見る価値は十分にあるだろう
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/drifting_home
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/379121
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