Netflixで配信された「アイリッシュマン」
あの巨匠マーティン・スコセッシ監督の最新作
製作費1億5900万ドルの超大作である
ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシという3大レジェンド俳優が共演
実在の殺し屋フランク・シーランの半生と共に、第2次大戦後のアメリカの裏社会を描き出す
本作は批評家から絶賛され、様々な賞を受賞
アカデミー賞の前哨戦といわれるゴールデングローブ賞でも、5部門にノミネート
そして、特に絶賛されているのが、アル・パチーノと共に助演男優賞にノミネートされているジョー・ペシである
ジョー・ペシ演じるギャングのボス、ラッセル・バッファリーノ
抑えた演技の中に、狂気と凄味が感じられる
マーティン・スコセッシ作品には4度目の出演となるジョー・ペシ
さすがの存在感だ
ところが「アイリッシュマン」はジョー・ペシの引退作品になるのではないかと噂されている
それは何故なのか?
ジョー・ペシとは?
小柄で甲高い声
特異な存在感を放つ役者である
ジョー・ペシは幼い頃から2人の兄弟と共に、父からレッスンを受けていた
1976年に「The Death Collector」という低予算の映画に出演したが、全く売れなかった
その後は芸能界に見切りをつけ、様々な職を転々としていた
1979年、たまたまテレビで見た「The Death Collector」のジョー・ペシの演技に感銘を受けたロバート・デ・ニーロは、「レイジング・ブル」に出演してくれるように電話で依頼した
その頃、ジョー・ペシはイタリアン・レストランのオーナーをやっていて、4年近く演技をしていなかった
そういう理由で断ったが、デ・ニーロは諦めずマーティン・スコセッシまで担ぎ出し、出演依頼を続けた
根負けしたジョー・ペシはデ・ニーロの弟のジョーイ・ラモッタ役で出演
「レイジング・ブル」のジョー・ペシの演技は称賛され、アカデミー助演男優賞にノミネートされた
その後もデ・ニーロ、スコセッシとは「グッドフェローズ」「カジノ」で組んだ
「グッドフェローズ」の短気で凶暴なギャング役で、アカデミー助演男優賞を受賞
オスカー史上、2番目に短いスピーチが話題になった
ちなみに1番はアルフレッド・ヒッチコックが生涯功労賞を受けた時のスピーチ「ありがとう」
それ以外にも「リーサル・ウェポン」シリーズのレオ・ゲッツ役、「ホーム・アローン」シリーズのコソ泥役で人気を博した
個人的に好きなのは1993年の「いとこのビニー」
大学生のビル(ラルフ・マッチオ)は友人と旅行中に、殺人の罪で逮捕される
完全な濡れ衣だった
ビルはニューヨークで弁護士をやっているいとこのビニーに救いを求める
ところがやって来たビニーは、弁護士になってまだ6週間だった………………
大爆笑の傑作コメディ
法廷ものとしても楽しめる
ジョー・ペシは落ちこぼれの弁護士を好演
ビニーの婚約者を演じたマリサ・トメイはアカデミー助演女優賞を受賞
ジョー・ペシ好きなら必見の映画である
順調な役者生活を送っていたジョー・ペシ
ところが1998年の「リーサル・ウェポン4」の後、役者を引退すると宣言した
いったい何故なのか?
引退した理由
ジョー・ペシは役者を辞めてから、競馬に熱中していた
ペシは多くの時間を競馬に費やし、ブリーダーズカップ・ディスタフで優勝したラウンドポンドなどの馬主にまでなった
だが、俳優業や競馬よりも、ジョー・ペシが本気で取り組んでいるものがある
それは音楽である
そもそもジョー・ペシは60年代に歌手として芸能界に足を踏み入れた
「シェリー」などで世界的に有名なバンド「フォー・シーズンズ」
そのメンバー、ボーカルのフランキー・ヴァリやトミー・デヴィートと、ジョー・ペシは幼馴染で彼らにボブ・ゴーディオを紹介した
ボブはバンドに加入し、後に代表的な曲のほとんどの作曲を手がけた
その経緯はクリント・イーストウッド監督の「ジャージー・ボーイズ」で描かれている
若きジョー・ペシを演じたのはジョセフ・ルッソ
ジョー・ペシは1968年に最初のアルバム「Little Joe Sure Can Sing!」をリリースした
しかし、音楽では芽が出ず、代わりに俳優として大きな名声を築いた
ところが本人は音楽への情熱がずっとくすぶっていたようだ
1998年に「Vincent LaGuardia Gambini Sings Just For You」というアルバムを発表
その後は映画業界からは身を引き、ロバート・デ・ニーロ監督の「グッド・シェパード」と「ラブ・ランチ 欲望のナイトクラブ」という作品に出演しただけだった
2019年11月にもジョー・ペシは「Still Singing」という新しいアルバムをリリースしている
やはり音楽活動に本腰を入れているようだ
アイリッシュマン
そんな俳優業を引退していたジョー・ペシが「アイリッシュマン」で復帰
再び演技を始める気になったのだろうか?
だが、そうではないようだ
過去数十年に渡って、映画業界の誘いに「ノー」と言い続けてきたジョー・ペシ
完全に演技への興味はなくしたように見えた
けれど、長年の友人であるロバート・デ・ニーロからの頼みでは、話を聞くぐらいはせざるを得なかったようだ
それでもジョー・ペシは断固出演を拒否した
どうしても「アイリッシュマン」に出演して欲しいロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシは、40〜50回は説得を続けたという
何故、最終的にジョー・ペシは出演を承諾したのか?
デ・ニーロとスコセッシも本当のところは分かっていないようだ
だが、デ・ニーロのこの言葉が決め手になったかも知れないという
「マーティンの作品に出演するチャンスは、これが最後かも知れないぞ!!」
ジョー・ペシももう76歳
マーティン・スコセッシやロバート・デ・ニーロももはや高齢である
この3人が揃って映画を撮ることは、もうないかも知れない
友人であるデ・ニーロとの共演
尊敬する監督スコセッシの作品への参加
おそらくこれが最後のチャンス
それがジョー・ペシが出演を承諾する決め手となったのではないか
だが、実際のところは本人しか分からない
あまりに2人がしつこくて、根負けしただけなのかも………………
まとめ
長いブランクをものともせず、見事な演技を見せたジョー・ペシ
この「アイリッシュマン」がジョー・ペシの最後の作品になる可能性は、高いかも知れない
それは非常に残念だ
いや、むしろ最後にもう一度、彼の演技を見れた幸運に感謝すべきか
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