Netflix「アイリッシュマン」感想と解説(ネタバレあり) スコセッシの集大成!!

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ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ
3人のレジェンド俳優が出演
そして、監督があのマーティン・スコセッシ
この作品が実現したことに感謝しかない
第二次世界大戦後のアメリカの裏社会
男たちの友情、忠誠、裏切り
それが時折、炸裂する暴力と共に、軽快に生々しく描かれる
主要キャストは誰もが名演
若い頃から老いるまで、最先端技術で本人たちが演じている
そのことが作品に統一感を生み出している
裏社会をテーマにしたマーティン・スコセッシ作品の集大成
ファンにとってはボーナスのような作品だ
確かに3時間半は長い
退屈することはなかったが、途中で疲れを覚えることはあった
しかし、その長さこそが時代の流れ、男たちの関係性の変化を実感を伴って伝えてくる
出来ればノンストップで見ていただきたい
時の流れに翻弄される男たちの心情が心に染みるはずだ


予告編

『アイリッシュマン』予告編 – ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ出演、マーティン・スコセッシ監督 – Netflix

作品情報
作品名「アイリッシュマン」(原題The Irishman)
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:スティーヴン・ザイリアン
キャスト:ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテル
上映時間:209分
製作国:アメリカ(2019年)

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ざっくりあらすじ

第2次世界大戦後のアメリカの裏社会を、一人の殺し屋の目を通して描き出す………………

感想(ここからネタバレ)

マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロ
夢のタッグが復活!!

あなたが家にペンキを塗ると聞いた

老人ホームで車椅子に座ったフランク・シーラン
彼はかつてマフィアの殺し屋だった

1950年代、フランクはトラックの運転手だった
彼は積み荷の生肉を地元のギャングに売った
そのことが縁で、フランクはラッセル・バッファリーノと出会う
ラッセルはマフィアの上役で、一目置かれた存在だった
フランクはラッセルからの様々な依頼を請け負うようになった
その中には殺人も含まれていた

フランクはラッセルに信頼され、家族ぐるみの付き合いをした
ある日、ラッセルはフランクにとあるお願いをする
友人が困っている
彼の手助けをして欲しいというのだ

その男の名はジミー・ホッファ
全米トラック運転組合の委員長で、ビートルズよりも人気があるといわれている男だ
アメリカでホッファを知らない者はいなかった
彼はマフィアと深いつながりを持っていた

フランクはホッファのボディガードを勤めた
ホッファは気性の激しい男だが、実直なフランクのことを気に入った
二人は強い信頼で結ばれた
しかし、時代が流れ、ジミー・ホッファは次第にマフィアにとって、目障りな存在となっていった………………

マーティン・スコセッシ

いわずと知れた巨匠であり、多くの作品を生み出している
個人的に好きなのは暴力や裏社会をテーマにした作品だ

「ミーン・ストリート」「タクシードライバー」「グッドフェローズ」

特にロバート・デ・ニーロとタッグを組んだ作品は、燦然と輝いている

マーティン・スコセッシは登場人物を美化しない
どこかストリート感覚があり、マフィアのボスもチンピラが成長した姿のように見える
その辺りがフランシス・フォード・コッポラの「ゴッドファーザー」とは違う

”トイレで撃たれて死亡”
登場人物はその死に方が、初登場時にテロップで示される
誰もロクな死に方をしていない
マフィアなどしょせんはロクデナシなのだ
そんなスコセッシの冷徹な視線が感じられる
同時に彼らも良心があり家族を持つ1人の人間
ロクデナシたちへのスコセッシの愛情も垣間見える

ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテル
スコセッシ映画お馴染みの俳優たちが集結
そのためか本作はマーティン・スコセッシの集大成のような仕上がりになっている
終盤に描かれる孤独な老後のフランクの姿
それは老いと向き合う現在のスコセッシの心情が、反映されているのかも知れない

最近はマーティン・スコセッシのマーベル批判が、たびたび取りざたされている
個人的にはマーベルも好きだ
でも、言いたいことを言うスコセッシの姿は嫌いじゃない
それぞれが自分たちの価値観を貫けばいい
だからこそ多様な作品が生まれる

ロバート・デ・ニーロ

「ミーン・ストリート」「ゴッドファーザー PART II」「タクシードライバー」「ディア・ハンター」「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」「アンタッチャブル」

かつてのデ・ニーロは輝いていた
その徹底的な役作りはデニーロ・アプローチと呼ばれ、尊敬を集めた
真の偉大な名優だったと思う

しかし、2000年代に入って、出演作が増えてくると、デ・ニーロの演技に物足りなさを感じるようになった
作品も適当に選んでいるように思えた
1995年の「カジノ」以降、スコセッシともコンビを組んでいない

そして24年ぶりのタッグ作「アイリッシュマン」
ついに黄金コンビが復活
こんなに嬉しいことはない

正直、今回のデ・ニーロは大丈夫かと心配だったが、やはり名優
些細な目の動きなどで心情を表現
殺し屋としての凄みもあった
やはりスコセッシ作品では輝いている

今回、デ・ニーロが演じるフランク・シーランは、2人の主を持つ殺し屋である
完璧に殺しを遂行する殺し屋フランク
だが、そんな彼もラッセル・バッファリーノとジミー・ホッファという2人の恩人の間で苦悩する

組織か、友情か
忠誠か、裏切りか

強烈な個性のボスたちに振り回されるフランクの姿は、どこか人間味があってユニーク
しかし、フランクは自分の身を守るために、友を手にかけることになる
そのことがずっとフランクに後悔の念を引きずらせる

ジョー・ペシ

「グッドフェローズ」でアカデミー助演男優賞を受賞
「リーサル・ウェポン」シリーズや「ホーム・アローン」など人気作にも出演
名バイプレイヤーだったジョー・ペシ
個人的には「いとこのビニー」が好き

そんな名優のジョー・ペシだが、引退を表明
何年も映画に出ていなかった
ロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシは、どうしてもジョー・ペシに「アイリッシュマン」に出てもらいたかった
ジョー・ペシは50回以上断ったが、やがて根負けしたという

「グッドフェローズ」などチンピラというイメージの強いジョー・ペシ
しかも長いブランクがある
マフィアのボス役など務まるのかと心配していたが、杞憂だった
その演技の冴えは健在
ラッセル・バッファリーノという優しさと冷徹さを併せ持ったボスを、見事に演じている
見終わってみると、この役はジョー・ペシ以外考えられない

アル・パチーノ

いわずと知れた名優

「ゴッドファーザー」「スケアクロウ」「狼たちの午後」「スカーフェイス」

代表作には事欠かない
意外にもマーティン・スコセッシ作品に出るのは初
相性良さそうなのに

本作ではアル・パチーノとロバート・デ・ニーロの共演が実現

マイケルとヴィトーの親子共演が見れるなんて!!

映画ファンには感涙もの
実際には「ヒート」「ボーダー」などでも共演しているのだが、やはりマフィア物となると感慨が違う

ジミー・ホッファを演じるアル・パチーノの熱演が凄い
演説で組合員を魅了する姿は、まさにカリスマ性を感じさせた
権力志向が強く頑固で気難しい男
だが、フランクとは強固な絆を築く

突っ走ることしか知らないホッファ
そんなホッファの存在が、次第にマフィアにとって目障りになっていく
そして運命の1日
ホッファが殺される瞬間まで、フランクを信頼しきっていたのが切なかった

「アイリッシュマン」について

超大作で登場人物も多いが、物語の中心となるのは3人の男たちのドラマである
ある意味、シンプルな作品だ
ケネディ暗殺やキューバ危機など、大きな事件に裏社会がここまで関わっていたというのも興味深かった

特殊効果によりベテラン俳優が若い頃から演じるというのも画期的だった
そのおかげで作品に統一感が生まれている
けれど、そのせいで製作費が膨れ上がった
様々なスタジオが企画から降りた
Netflixが出資をしなければ、映画はお蔵入りになっていたかも知れない
最終的な製作費は1億5900万ドル(約174億円)といわれている

3時間29分
この20年で最長の作品といわれている
おそらく普通の劇場公開作品だったら、短くカットされていただろう
1日に上映できる回数が減ると、収益に響くからだ
まさに動画配信サービスであるNetflixだからこそ、実現した
監督の理想の作品作りを手助けしたのはNetflixだけ
これも時代の変化と一抹の寂しさを感じさせる

まとめ

レジェンド俳優たちがマーティン・スコセッシ作品に集結
まさにドリームチームの結成
それだけで満足
作品の完成度も高い
スコセッシの総決算のような作品となっている
ファンなら絶対に見逃せない
映画史の一つの事件として目撃しておくべきだろう


The Irishman (2019) on IMDb


Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/the_irishman
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/369149

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