映画「ラストレター」あらすじとネタバレ感想 最後の手紙に込められた想い

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やっぱり岩井俊二は凄い
瑞々しくて美しい映像
繊細なシナリオ
実在しているかのような自然体のキャラクターたち
少女を撮らせたら世界一ではないだろうか
まさに岩井ワールド
亡くなった姉
手紙のやり取りにより蘇る高校時代の記憶
初めての恋
名作「Love Letter」とA面B面のような関係の作品
懐かしくて、切なく、苦い
だが、決して生真面目で堅苦しい映画ではない
随所にユーモアが溢れている
キャストは誰もが好演
特にちょっとそそっかしいヒロインを演じた松たか子が素晴らしい
福山雅治もはまり役
そして様々な感情が去来するクライマックス
見終わっても、ラストの余韻が抜けきらない
ファンなら必見


予告編

作品情報
作品名「ラストレター」
監督:岩井俊二
キャスト:松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治
上映時間:120分
製作国:日本(2019年)

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ざっくりあらすじ

裕里は高校の同窓会に出席するが、憧れの先輩に姉の未咲と間違えられ………………

感想(ここからネタバレ)

岩井俊二の作品を劇場で見るの久しぶり
どっぷりハマってしまった

再会

姉の未咲が亡くなった
岸辺野裕里は葬儀の場で、未咲の娘の鮎美から、未咲宛ての高校の同窓会の案内状を見せられる
姉の死を伝えなければならない
裕里は未咲の同窓会に出席した

ところが裕里が会場に行くと、未咲だと勘違いした出席者たちに囲まれた
姉は高校時代、生徒会長で人気者だった
あまりの歓迎ぶりに、裕里は本当のことを告げられなくなる

出席者の中に乙坂鏡史郎がいた
鏡史郎は裕里にとって生物部の先輩で、初恋の人だった
帰ろうと会場を抜け出した裕里を、鏡史郎は追ってきた
鏡史郎は自分のことを未咲だと勘違いしている
彼は高校時代から姉が好きだった

自分は妹の裕里だと言い出せないまま、連絡先を交換した
ところが携帯を風呂場で壊してしまう
仕方なくもらった名刺の住所に手紙を送った
自分の住所は書かなかった
今では裕里にも夫と2人の子供がいる

それから時々、裕里は鏡史郎に手紙を送るようになった
姉の未咲を装った手紙
返事を書きたいが宛先の住所が分からない鏡史郎は、高校時代の名簿を調べて、未咲の宮城の実家に送った
そこでは未咲の娘の鮎美が、手紙を受け取った
死んだ母に届いた手紙
読んでみると、高校時代の未咲との鏡史郎の思い出が語られていた
それは鮎美も知らない母の在りし日の姿だった

もっと母のことが知りたい

鮎美も未咲を装って、鏡史郎に手紙を書くのだが………………

岩井俊二

実を言うと昔、岩井俊二に偏見を持っていた
軟弱な恋愛ものばかり撮っている監督
作品を見もしないで、そう思い込んでいたのだ

初めて「Love Letter」を見た時の衝撃は凄まじかった

お、面白すぎる………………

特にシナリオの完成度が半端じゃなかった
この監督、只者じゃない!!

そこから岩井俊二の作品を漁り始めた
GHOST SOUP」「オムレツ」「FRIED DRAGON FISH」「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」「undo」「PiCNiC」
煌めく傑作の数々
「スワロウテイル」も劇場に見に行った
大好きな映画だ
また「リリイ・シュシュのすべて」の衝撃も凄かった
見た後、毎日が憂鬱だった
忘れられない作品だ

称賛すべきは岩井俊二の作品の物語の幅広さ
映像作家と見られがちだが、ストーリーテラーとしての力量が凄い
岩井作品はどんなジャンルを描いても、一種の切なさが滲み出る
そこも魅力
まさに岩井節!!

物語の完成度の高さは、岩井俊二の小説家としての顔が関係している
学生時代は小説家を目指していたという岩井
そのため映画の脚本に取り掛かる前に、まずは小説として仕上げることが多いという
その小説をさらにブラッシュアップしたものが脚本となるのだ
完成度が高いのも頷ける


ラストレター (文春文庫)

もちろん映像美も素晴らしい
この「ラストレター」では舞台である宮城の緑の美しさが魅力的だった
冒頭の川のシーンも印象的
登場人物は端役にいたるまで、どこか生々しい
岩井俊二の撮る映像には、生命力が溢れているのだ
それがただ綺麗なだけじゃない瑞々しさや情感を生み出しているのだろう

「Love Letter」

「Love Letter」「ラストレター」
まるでレコードのA面とB面のような関係である
物語の構造も共通したものが多い

どちらも死者をめぐる物語である
「Love Letter」は主人公、渡辺博子の婚約者の藤井樹
「ラストレター」は裕里の姉の未咲
実際に彼らが描かれるのは、高校時代だけというのも共通している
大人になってからの姿は登場しない

手紙が大きな役割を果たすのも同じだ
使われる便せん、筆跡、手触り
手紙は書いた人そのものを、ダイレクトに映し出す
メールとは似て非なるものだ
形として残るものであり、積み重ねられていく
まるで募っていく想いのように

松たか子

この「ラストレター」という作品は、未咲という死者に囚われた人々の物語である
最初は松たか子演じる岸辺野裕里の視点からスタートする
姉である未咲
生徒会長で人気者で学園のヒロイン
何をやっても勝てなかった
その姉が死んだ

高校時代の憧れの先輩だった鏡史郎との再会
彼は自分のことを未咲だと勘違いしている
鏡史郎はずっと姉のことを好きだったのだ
裕里は未咲のふりをしてしまう

夫と子供が2人いる裕里
初恋の人との再会
並の監督や作家なら、そこからドロドロした不倫劇に発展してしまうだろう
ところがこの作品は違う
駄目だと思いつつ未咲と偽って、手紙を書いてしまう裕里をコミカルに描いている

松たか子が素晴らしい
姉へのコンプレックスを引きずった裕里
だが、それを感じさせない明るさとそそっかしさ
基本的にシリアスなストーリーなのだが、裕里のキャラクターに救われている
松たか子がこれほどコメディエンヌとしての才能があるとは
絶妙な演技に、劇中では何度も笑ってしまった

松たか子が岩井作品に出演するのは、「四月物語」に続いて2度目
キャラクターもどこか通じるものがある

福山雅治

福山雅治演じる乙坂鏡史郎
売れない小説家で独身
高校時代、未咲に一目惚れして、大学時代に一時期付き合った
その想いをいまだに引きずっている
物語の半ばで、視点は裕里から鏡史郎に切り替わる

同窓会に現れた未咲
それが妹の裕里だと、鏡史郎は最初から気づいていた
裕里の口から未咲の死を告げられる
未咲は自殺だった

自分と別れてから、未咲は大学の先輩の阿藤と駆け落ち同然で一緒になった
阿藤は働きもせず、すぐに暴力をふるう男だった
未咲は憔悴し、最後は山の中で自殺した

鏡史郎は別れても、ずっと未咲のことを想っていた
今まで出した本は1冊だけ
タイトルは「未咲」
未咲のことを書いた小説
それ以来、何を書いても未咲のことになってしまう
鏡史郎はいまだに未咲に囚われていた

福山雅治は初恋の人を忘れられない男を好演
未咲の死を知った時の無力感、怒り、後悔
そんな感情を上手く表現していた

広瀬すず

最後の視点は未咲の娘の鮎美
広瀬すずは鮎美と高校時代の未咲を演じている

自殺した母
母はいつも父親に暴力を振るわれ、辛そうだった

しかし、鏡史郎からの手紙で、鮎美は高校時代の母親のことを知る
生徒会長で優等生で人気者
学園のヒロイン
それは全く知らない母親の姿だった

ずっと読むことが出来なかった母親の最後の手紙………………遺書
鏡史郎と知り合い、昔の母を知ったことで、鮎美はそれを読む勇気を出す
それは高校時代の母親の卒業生代表の答辞だった

母親を亡くした悲しみ
周りを心配させないために明るく振る舞う姿
広瀬すずはそんな少女の複雑な感情を、巧みに演じている
また別人かと思うほどの、高校時代の未咲の演技も見事

庵野秀明

ファンとしてこの人にも触れなければなるまい

庵野さん、こんなところで何やっているんですか!?
「エヴァンゲリオン」は本当に間に合うんですか!!

それはいいとして(よくないけど)、庵野秀明はまさかの松たか子の夫役
職業は漫画家
妻の携帯に届いた男からのメッセージを読んでヤキモチ
携帯をお風呂に投げ込んで壊してしまう
物語のきっかけを作る重要な役だった

庵野秀明の演技は凄く良かった
ヤキモチを焼く場面も、普段の夫婦の仲の良さを感じさせてくれた
庵野が描いていたマンガの原稿
本人が描いたものなのか気になる

岩井俊二は庵野秀明の監督作品「式日」に出演している
本作では立場が逆になった

「Love Letter」「ラストレター」
どちらも死者にまつわる物語である
では「ラストレター」は「Love Letter」の焼き直しなのかというと、そうではない

「Love Letter」の藤井樹は山の遭難事故で死んだ
悲しい出来事だ
だが、どうしようもなかった
諦めるしかない

対して「ラストレター」の遠野未咲の死は自殺
どうしてこんなことになってしまったのか
彼女を救う方法があったのではないか
悔やんでも悔やみきれない

どちらの作品も楽しかった高校時代のシーンが随所に挿入される
だが、受ける印象はかなり違う
「Love Letter」はこんなこともあったと死者を懐かしむ感情
「ラストレター」はあの頃の彼女は幸せそうだったのにという苦い感情

豊川悦司演じる阿藤の登場シーンが圧巻
未咲の元恋人で、鮎美の父親
仕事もせず、すぐに暴力をふるい、未咲を自殺に追い込んだ男
未咲への執着
とらえどころのなさ
短い出演シーンだが異彩を放っている
この世の悪を象徴したような男だ

どうしようもない闇がこの世に存在する
時に人はそれに囚われる
おそらく岩井俊二自身が実際に感じていることなのだろう
未咲は闇に囚われた

無力感、やるせなさ、理不尽な不幸への怒り
「ラストレター」では「死」へのそういったネガティブな面が描かれている
阿藤の役を「Love Letter」の豊川悦司が演じたのも、偶然ではないだろう
「ラストレター」は「Love Letter」で描かれなかった死のもう一つの側面である

再生

世の中にはどうしようもない悲しみが存在する
だが、立ち向かわなければならない

未咲が鮎美に残した「ラストレター」
それは自分がもっとも輝いていた時の、卒業式の答辞だった
未来は開けている
恐れてはいけない
前に進まなければならないのだ

ラストは冒頭の鮎美の憂いを帯びた眼差しで終わる
なぜ、ここに繋げたのか
どうしようもない悲しみは存在する
だが、立ち向かえ!!
そんなメッセージに思えた

まとめ

岩井俊二が「Love Letter」で描き切れなかったもの
その25年ぶりの答え
ようやく「Love Letter」が完結したような気がした
岩井俊二は世界でもトップクラスの監督
改めてそれを実感した

allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/369158

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