Netflix「Mank/マンク」ネタバレ感想 「市民ケーン」はなぜ誕生したのか!?

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Netflixオリジナル映画
デヴィッド・フィンチャーの6年ぶりの監督作品
マンクこと脚本家のハーマン・J・マンキーウィッツは、いかにして名作「市民ケーン」を生み出したのか?

ゲイリー・オールドマンが素晴らしい演技を披露
まるで最盛期の黒澤明映画を見たような充足感

間違いなく2020年を代表する傑作
しかし、かなりとっつきにくい作品である
知らない人名や単語が頻出して、前半は退屈だった
そもそも、この映画を楽しむためには、「市民ケーン」を見ていることがほぼ必須条件
当時のハリウッドの知識も少しはあった方がいい
一部の映画ファン向けの作品という印象はぬぐえない
ただマンクという男の複雑なキャラクターに魅了された
強大な権力との戦い
反骨精神

もちろん「市民ケーン」の裏話としての面白さもある
デヴィッド・フィンチャーはもはや巨匠の風格
色々とハードルの高い作品ではあるが、映画ファンならぜひ挑戦して欲しい


予告編

『Mank/マンク』予告編 – Netflix

作品情報
作品名「Mank/マンク」(原題Mank)
監督:デヴィッド・フィンチャー
キャスト:ゲイリー・オールドマン、アマンダ・セイフライド、リリー・コリンズ、アーリス・ハワード、チャールズ・ダンス
上映時間:132分
製作国:アメリカ(2020年)

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ざっくりあらすじ

マンクこと脚本家のハーマン・J・マンキーウィッツ。彼はいかにして名作「市民ケーン」を生み出したのか?

「市民ケーン」

新聞王ケーンが“バラのつぼみ”という謎の言葉を残して死んだ
記者のトンプソンはその言葉の謎を解き明かすため、様々な人物から話を聞くが…………
1941年公開のオーソン・ウェルズの監督デビュー作
撮影、演出、脚本
斬新な手法がいくつも用いられ、映画史上最大の傑作とされ、様々な映画ランキングで1位に君臨している

感想(ここからネタバレ)

1930年代のハリウッドにタイムスリップした気分になった…………

脚本執筆

1940年、マンクこと脚本家のハーマン・J・マンキーウィッツは、牧場の一室にカンヅメにされていた
オーソン・ウェルズの監督作品の脚本を手がけるためだ
その時、マンクは足を骨折していたため、秘書のリタと看護婦が付き添わされた

オーソン・ウェルズは脚本を60日で書けと言う
最初の約束より30日も短い
しかもその間はアルコール抜き
マンクにとっては耐え難いことだった

脚本は全くはかどらなかった
このままでは期日に間に合わない

そして脚本の内容にも問題があった
この作品の主人公のモデルが、実在の新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストであることは、誰の目にも明らかだ
多くの新聞社、出版社、ラジオ局を所有する権力者
ハーストに逆らうことはタブーとされている
この作品はハーストに喧嘩を売っているのだ

なぜマンクはこんな危険な脚本を手がけたのか?
マンクの脳裏には、かつてのハリウッドでの記憶が蘇っていた…………

デヴィッド・フィンチャー

「セブン」、「ファイト・クラブ」、「ゾディアック」、「ソーシャル・ネットワーク」
次々と一筋縄ではいかない話題作を送り出してきたデヴィッド・フィンチャー
本作は「ゴーン・ガール」以来、6年ぶりの新作

「Mank/マンク」の脚本はフィンチャーの父ジャック・フィンチャーが2003年に亡くなる前に書き上げたもの
本来は1997年の「ゲーム」の次に手掛けるつもりだったが、モノクロでの撮影にスタジオが難色を示し頓挫した
その時はマンク役がケヴィン・スペイシー、マリオン役がジョディ・フォスターだった
Netflixと組んだことによって、ようやく本作の製作が実現
ちなみにデヴィッド・フィンチャーはこの後も、Netflixと4年の独占契約を結んでいる

デヴィッド・フィンチャーの完璧主義は有名
クライマックス、酔っぱらったマンクがハーストの家で騒ぎを起こす場面は、同じシーンを何度も繰り返したという

たまらずゲイリー・オールドマンが文句を言った
「デヴィッド、もう100回目だぞ」
それに対し、デヴィッド・フィンチャーはこう答えた
「ええ、分かってますよ。次は101回目です。リセットしてください」

ゲイリー・オールドマン

マンクことハーマン・J・マンキーウィッツを演じる
アルコール依存症で皮肉屋
いつも軽口を飛ばしている
オーソン・ウェルズの監督デビュー作の脚本を手がけることになるが…………

アル中で軽薄
いつも不真面目な態度
最初の印象は最悪だった
どうして、こんな奴を主人公にしたのか分からない

ところが次第にマンクの様々な面が見えてくる

その優しさ
反骨精神
クリエイターとしての矜持

いつの間にかマンクというキャラクターに魅了されていた

ゲイリー・オールドマンは素晴らしい演技を披露
マンクという一筋縄ではいかない複雑なキャラを、見事に演じている
その格好良さに惚れ惚れした

アマンダ・セイフライド

「マンマ・ミーア!」のソフィ役で有名
実在の女優、マリオン・デイヴィスを演じる
マリオンはウィリアム・ハーストの愛人だったことでも有名
ハーストはマリオンを非常に気に入り、金に物を言わせ46本の主演映画を作らせた
だが、マリオン自身の演技力は乏しかったという
「市民ケーン」のスーザン・アレキサンダーは、マリオンがモデルといわれている

マンクはマリオンと次第に親しくなる
2人の友情は本作でもっとも暖かいものとなっている

トム・バーク

24歳の天才で自信家のオーソン・ウェルズを演じる
マンクにデビュー作の脚本を依頼するオーソン
最後には脚本のクレジットのことで、マンクと対立するが…………

ハリウッド

本作では1930年代のハリウッドを見ることが出来る

マルクス兄弟、ジョージ・S・カウフマン、デヴィッド・O・セルズニック

知っている人物や名前が、続々と出てくる
映画ファンなら興味深いだろう

華々しいハリウッド
しかし、その暗部も描かれる

世界的な不況
役者や撮影スタッフの賃金をカットする上層部
しかし、自分たちは優雅な生活を送っている

マンクは上層部に気に入られ、比較的安泰な地位を維持している
だが、内心ではその現状を苦々しく思っていた

反骨精神

新聞王ハーストのお気に入りだったマンク
なぜ彼は反旗を翻すような脚本を書いたのか?
本作は現在と過去を行き来し、その理由を紐解いていく

社会主義者などへの思想の弾圧
この作品はハリウッドの当時の内幕を生々しく暴く
そしてカリフォルニア州の知事選挙
ハーストやMGMの副社長ルイス・B・メイヤーたちは、労働者の権利を主張する民主党候補を蹴落とすために、共和党こそ労働者の味方と思わせるニセのニュース映画を製作する
それは効果てきめんで、知事選は共和党が勝利
その映画を監督したマンクの友人シェリーは、それを苦にして自殺する

結局、自分はただの雇われ脚本家
マンクはそのことを痛感する

全てを敵に回すことになる
何もかも失うかも知れない
それでもマンクは「市民ケーン」を書き上げた
強大な力への弱者の反抗
本作ではクリエイターの矜持と反骨精神が描かれている

実際にハーストの「市民ケーン」への弾圧は凄まじいものだった
ハースト系の全ての新聞と放送局での広告やレビュー、コラムなどを一切禁止
また映画館にも圧力をかけ、上映禁止にした
これらの妨害によりメジャー映画会社であるRKOは、160,000ドルを損失したといわれている

それでもテレビ放送などを通して、「市民ケーン」は再評価されていった
現在では映画史上最大の傑作として位置付けられている

まとめ

本作には色々と問題がある

「市民ケーン」を見たことがない
ハリウッドにも興味ない

そんな人には全く関心が湧かない題材だろう
モノクロ映像も古臭く感じるかも知れない

だが、マンクの生き様には、誰もが感じ入るものがあるだろう
デビッド・フィンチャーの演出も、もはや巨匠の風格で、豊潤な味わいである
本作は必ず賞レースで名前を連ねることになるはずだ


Mank (2020) on IMDb


Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/mank
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/373907

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