Netflix「プライベート・ライフ」感想 上質な演技と演出で見せる良作

すでにとても高い評価を得ている作品である
ロッテントマトでは10月8日時点で、批評家観客双方の評価が驚異の90%越え
実際、地味だがとても良い作品だ
不妊治療に必死に取り組む中年夫婦を通して、人生の悲哀や喜びを感じることが出来る


予告編

作品情報
作品名「プライベート・ライフ」(原題Private Life)
監督:タマラ・ジェンキンス
キャスト:キャスリン・ハーン、ポール・ジアマッティ、ケイリー・カーター、モリー・シャノン、デニス・オヘア
上映時間:123分
製作国:アメリカ(2018年)

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PC用

ざっくりあらすじ

レイチェルとリチャードは共に40代で、不妊治療に取り組んでいた。だが、一向に効果は現れない。そんな時、姪のセイディが二人の家に居候することになり…………………

感想(ここからネタバレ)

不妊治療に必死に取り組む中年夫婦
スターも出ていない
派手な展開もない
この内容で劇場公開することは、かなり難しいだろう
Netflixはこういった商業的には弱い作品の受け皿になりつつある
今後も良作が次々と生まれる予感がする

レイチェルとリチャード

レイチェルリチャードは40代の中年夫婦
子供が出来なくて、人工授精を何度か試したが失敗
ついには体外受精も試みたが駄目だった
不妊治療は経済的にも二人に大きな負担をかけていた

そんな時、医師からドナー卵子を使った妊娠を勧められる
若い女性から卵子を提供してもらうのだ
それなら妊娠の可能性は格段に高まる
だが、それはレイチェルの遺伝子は子供に継がれないということだ
とても承認できないレイチェル
しかし、リチャードはそのアイディアを検討してみようと言う

「子作りのために誘拐以外は何でもしてきた。なぜ、これがいけない?」

最初は拒絶していたレイチェルも冷静になり、結局はその案を受け入れる
もはや藁にもすがりたい気分なのだ

次は卵子を提供してくれる若い女性を探さなくてはならない
ネットでは卵子提供者のリストがずらりと並んでいた

「まるでネットオークションね」

だが、全くの赤の他人の卵子を受け入れるのは抵抗があった
自分に姉か妹がいれば良かったのに

そんな時、姪のセイディが居候したいと押しかけてきた
彼女は作家を目指しており、大学を中退して都会に出てきたのだ
リチャードとレイチェルは、彼女に卵子を提供してもらうことを思いつくのだが………………

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キャラクター

レイチェル
不妊に悩む40代の女性
作家業をしている
他人の卵子を使うのに抵抗を見せるが、結局は受け入れる
演じるのはキャスリン・ハーン

出演作

「ヴィジット」
M・ナイト・シャマラン監督のホラー・サスペンス
幼い姉弟の二人は田舎の祖父母のところへ遊びに行く
初めて会う祖父母はとても親切だったのだが、次第に奇妙な言動を見せるようになり………………
キャスリン・ハーンは姉弟のシングル・マザーを演じる

ヴィジット (字幕版)

リチャード
レイチェルの夫
睾丸が一つしかないのを気にしている
長く続く不妊治療に疲れを見せている
演じるのはポール・ジアマッティ

出演作

「ウォルト・ディズニーの約束」
エマ・トンプソン、トム・ハンクス主演
「メリーポピンズ」誕生秘話
ポール・ジアマッティはお迎えの運転手を好演

ウォルト・ディズニーの約束 (字幕版)

セイディ
リチャードの姪
都会に憧れて、大学を中退してリチャードたちのアパートに転がり込む
作家を目指している
演じるのはケイリー・カーター

シンシア
セイディの母親
神経質
レイチェルの人工授精に反対している
演じるのはモリー・シャノン

卵子提供者

セイディに卵子を提供してくれないかお願いしてみようと考えるリチャードとレイチェル
だが、なかなか言い出せない
朝食の時に意を決して話を切り出す二人

「実は君の卵のことで話があるんだ」
「スクランブルエッグでも何でもいいよ」

それ以上言えずに、仕方なくスクランブルエッグを炒めるレイチェル
本人たちは真剣なのだが、思わず笑ってしまうシーンである
この作品ではこういった軽妙な会話が多くて楽しめる

ある夜、とうとうセイディに打ち明けるリチャードたち
セイディに卵子を提供して欲しいこと
だが、そのためには多くの検査や精神鑑定
ホルモン剤を増やすための注射も何本も打たなくてはならない
それによる副作用もある
もし、それでもよければお願いしたいと

「すぐに答えはいらない。ゆっくり考えてくれ」
「分かった」
「よかった。じゃあ、ビールのお代わりを持ってくるよ」
「分かった。やるよ、卵子提供」
「ええっ!? いやいや、もっとよく考えて」

セイディは優しいリチャードとレイチェルを、本当の両親のように慕っていたのだ
二人の役に立ちたい
それに大学を中退して仕事もないセイディは、何か目的が欲しかった
こうして3人は協力して一つのゴールを目指すことになった
今度こそ成功して、赤ちゃんを授かるために

不妊治療

人工授精
体外受精
卵子提供

不妊治療について、ここまで詳細に描いた映画を見たことがない
精神的負担だけではなく経済的負担も大きいということ
セイディの母親レイチェルはまともじゃないと嫌悪している
リチャードとレイチェルも自分たちは何をやっているのだろうと、馬鹿馬鹿しくなることがある
だが、それだけ切実なのだ

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養子

リチャードとレイチェルはかつて養子を取ることを考えたこともあった
ネットで養子提供者を募ったところ、ティファニーという19歳の少女から連絡があった
妊娠中で自分では育てられないので、赤ちゃんを提供したいというのだ
3人は毎日電話で連絡を取り合い、とても親密になった
リチャードとレイチェルはティファニーを自分の娘のように思った

そして、とうとう会う約束をし、二人ははるばるアーカンソー州のリトルロック市まで訪ねて行った
待ち合わせの店に、ティファニーはいつまで待っても現れなかった
そして、その後はいっさい連絡が取れなくなった
彼女は注目されたかっただけで、妊娠も嘘だったのか?
今になっても、それは分からない

二人の話を聞いてソーシャルワーカーの女性は言った

「金銭詐欺は目的が明確ですが、精神的詐欺は辛い。あなたたちは強いご夫婦ですね」

自然な演技

この作品で特筆すべき点の一つは、役者陣の演技の自然さだろう
特にレイチェルとリチャードを演じたキャスリン・ハーンポール・ジアマッティは素晴らしい
複雑な感情を巧みに表現し、生活感にあふれ自然
ニューヨークに行くとこの夫婦が本当にいるような錯覚を覚えてしまう
彼らの地に足のついた演技は本当に見事である

優しさと温かさと厳しさ

この作品では脚本、監督のタマラ・ジェンキンスの女性ならではの、キャラクターへの優しさや温かさが感じられる
そして、同時に厳しさが

レイチェルとリチャードの期待に応えようと、セイディは自分で薬の投与量を増やし病気になってしまう
病院に運ばれたセイディ
レイチェルとリチャードは愕然とする
自分たちのエゴで姪をひどい目に合わせてしまった

セイディの卵子は無事に取り出せたが、移植には失敗した
赤ちゃんは出来なかったのだ
途方に暮れるレイチェルとリチャード

まさかの展開である
絶対に今度こそは成功して、ハッピーエンドになるものだと思っていた

リチャードは疲れた顔で言う

「もう子供は欲しくない。僕たちは人生を無駄にしていた」

切ないラスト

あれから9ヵ月が経った
二人は何とか元気を取り戻し、ハロウィンを楽しんでいた
そこに一本の電話が入る
それは赤ちゃんを提供してもいいという妊娠中の女性からの電話だった

女性に会いにバージニア州まで出向くリチャードとレイチェル
約束の店に着いたが、女性はまだ来ていない
二人は身体を寄せ合って、じっと彼女が現れるのを待つ
果たして約束の女性は現れるのか?
以前のように、またすっぽかされるのでは?
固唾をのんで見守っていると、映画はそこで終わる

とても切なくて秀逸で見事なラストである
しばらく余韻がさめなかった

まとめ

人生の悲哀、せつなさ、おかしさ
それらを存分に味わえる作品である
中年夫婦の不妊治療を通して、描いてみせた着眼点が素晴らしい
派手な商業映画が劇場を独占している昨今
Netflixがこういった小品を提供することには、大きな意義がある
上質な演技と脚本と演出があれば、良作は出来る
それを本作は見事に証明してみせた

Private Life (2018) on IMDb


rotten tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/private_life_2018/

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コメント

  1. Kamoko より:

    初めまして。

    いつも丁寧なレビューが書かれていて、気持ち良く読ませていただいています。

    この映画は、本当に心に響きました…全体的に笑うシーンがたくさんですが、見終わった後にとても悲しい気持ちになりました。

    フィクションなのに、主人公たちの幸せを願わずにはいられませんでした。

    • しまと より:

      Kamokoさん、コメントありがとうございます。
      「プライベート・ライフ」は良作だと思うのですが、日本ではあまり話題になってないようで残念ですね。
      見終わって数日たつのに、いまだに主人公たちのことを考えてしまいます。
      それだけ知らないうちに、あの二人に感情移入してたんでしょうね。