息子に瀕死の重傷を負わせた連中への父親の復讐
はっきり言ってカタルシス皆無
ひたすら重い
見ていて気が滅入ること間違いなし
だが、映画のクォリティは高い
役者の熱演
演出
映像
どれも一級品
娯楽作品ではない
歯ごたえのあるドラマを求める人なら一見の価値あり
そこらの作品にはない衝撃を味わえるだろう
予告編
作品情報
作品名「息子のしたこと」（原題YOUR SON）
監督：ミゲル・アンヘル・ビバス
キャスト：ホセ・コロナド、アナ・ワヘネル、アシア・オルテガ、ポル・モーネン
上映時間：103分
製作国：スペイン、フランス（2018年）
ざっくりあらすじ
最愛の息子がクラブの外で暴行を受け、瀕死の重傷を負った。父親は犯人たちへの復讐を誓うが………………
感想（ここからネタバレ）
気が滅入ること間違いなし
娯楽作品を求めている人は見ない方がいいだろう
だけど、映画の質は高い
最愛の息子
外科医のハイメ・ヒメネスは妻と息子のマルコス、娘のサラの4人家族で、幸せな生活を送っていた
ある日、勤めている病院に息子のマルコスが運ばれてくる
マルコスは瀕死の重傷で、生死の境をさまよっていた
警察からの話では、マルコスはクラブの外で何者かに襲われたということだった
怒りと絶望に駆られるハイメ
息子をこんな目に遭わせた奴は誰なのか？
いてもたってもいられず、ハイメは独自に調査を始めた
息子の友人のペドロやガールフレンドのアンドレア
誰もが何かを隠しているようだった
そして、ハイメは犯人の一人と思われる青年に辿り着くが………………
登場人物
ハイメ・ヒメネス
外科医として成功している
最愛の家族と幸せな生活を送っていたが………………
演じるのはホセ・コロナド
マルコス
ハイメの17歳の息子
父親想いの優しい青年
何者かに暴行を受け、生死をさまよう
我が子のために鬼となる父親
この「息子のしたこと」の主人公は愛する息子の復讐のために一線を越える
こういった系統で代表的な作品を挙げてみよう
「96時間」
言わずと知れた人気アクション・シリーズ
元秘密工作員の主人公が誘拐された娘のために、パリで大暴れする
リーアム・ニーソンの代表作となった
「狼の死刑宣告」
「死霊館」「アクアマン」のジェームズ・ワン監督作品
息子をギャングに殺された父親が復讐の鬼と化す
ケビン・ベーコンの熱演が凄い
熱演
息子に瀕死の重傷を負わされたハイメ
演じるホセ・コロナドの鬼気迫る演技が凄まじい
外科医として成功した地位にあり、穏やかな人物だったハイメ
それが息子の事件をきっかけに、復讐の鬼と化す
少しずつ日常を逸脱していく姿は、息を呑むほどだ
そして、ついに一線を越える
その描写はリアルで、もし自分ならどうするか、と考えずにはいられない
息子を愛する等身大で愚かな父親を、ホセ・コロナドは見事に演じた
ミステリー
何者かに重傷を負わされた息子のマルコス
親友のペドロもガールフレンドのアンドレアも何かを隠している
事件の真相を憑りつかれたように探るハイメ
そして、明らかになる絶望的な真実
観客もハイメと共に無力感に襲われる場面である
その後にハイメが取った行動が衝撃的だ
人間はここまで愚かになれるのか
父親というものの業の深さを思い知らされた
演出
秀逸なのは演出である
登場人物に過剰に感情移入したりせず、冷徹な視線であるがままを描き出す
長回しの演出も抜群に上手い
ハイメが息子の事件を知らされるシーン
クラブのトイレのシーン
素晴らしいシーンがいくつもあった
また無駄なことを描かない抑制された演出も見事だった
描きすぎずに観客の想像に委ねる
引き算の演出だ
人によってはそれが物足りなく感じるかも知れない
だが、あえて見せない方向性は、とてもスタイリッシュだった
初期の北野武作品やジョニー・トー作品を彷彿とさせた
音楽
この作品は前半、ラジオなどを除いてBGMは流れない
しかし、主人公のハイメの心が復讐へと動き出すと、その内面に反響するように音楽が流れだす
そういった音楽へのこだわりも憎い
主題
この作品の原題は「YOUR SON」である
これがあなたの息子に起こったことならどうするか？
世の全ての父親に問うているのだ
この「息子のしたこと」ではいくつもの事柄が放置される
手を汚したハイメは警察に捕まるのか？
意識不明のマルコスは助かるのか？
他の犯人たちは野放しのままか？
それらはこの作品の主題ではないからである
同じ状況に置かれたら、あなたならどうするか？
どういう選択をするのか？
それをただ問うているのだ
この作品にカタルシスはない
ただやりきれなさが残る
それを不満に思う人も多いだろう
だが、だからこそハイメが最後に取った行動の衝撃は凄まじい
まとめ
決して楽しい作品ではない
人に強く勧めようとも思わない
しかし、この作品は見終わった後も余韻が長く尾を引く
ハイメの姿は自分たちの姿かも知れないのだ
記憶に残す価値のある作品である
rotten tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/your_son
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