Netflixオリジナルのアルゼンチン映画
逮捕された息子を救うために、アリシアは全てを投げうつが…………
実話に基づいた物語
小ぢんまりとした作品である
構成が複雑で、最初は誰もが混乱するだろう
過去と現在が並行して描かれるからだ
この辺りはかなりとっつきにくい印象
実話ベースで派手な出来事も起きない
万人向けとは言えない映画である
だが、なかなか見ごたえがあった
家政婦は何故殺人を犯したのか?
その謎でぐいぐいと引き付けられた
役者は皆が好演
子供の自然な演技が素晴らしかった
ミステリー要素はあるが、基本的にはヒューマンドラマ
ラストは静かな感動があった
地味だが見る価値のある作品だ
予告編
作品情報
作品名「ファミリー・クライム –ある家族の過ち–」(原題Crímenes de familia)
監督:セバスチャン・シンデル
キャスト:セシリア・ロス、ミゲル・アンヘル・ソラ、ソフィア・ガラ・カスティリオーネ
上映時間:99分
製作国:アルゼンチン(2020年)
ざっくりあらすじ
アリシアは息子のダニエルが、元妻への性的暴行の罪で捕まったと連絡を受ける。息子を救うために、アリシアは奔走するが…………
感想(ここからネタバレ)
かなり複雑な構成
脳みそをフル回転させる必要がある
息子の事件
広々としたアパート
住み込みの家政婦
優雅な女友達
アリシアはブエノスアイレスで夫のイグナシオと共に、快適な退職後の生活を送っていた
家政婦グラディスには3歳の息子がおり、アリシアは孫のように可愛がっていた
ある日、アリシアに拘置所から電話がかかってくる
息子のダニエルだった
元妻のマルセラへの性的暴行の罪で起訴されたというのだ
アリシアとイグナシオは急いで駆けつけた
ダニエルは訴えた
自分は息子に会いたかっただけだ
全てマルセラの罠にはめられたのだと
アリシアはダニエルの言うことを信じた
何としてでも救わなければ
しかし、息子の無実を証明するためには、全財産を投げうつ覚悟が必要だった…………
アリシア
退職後はヨガや女友達とのランチなど、優雅な生活を送っている
息子のダニエルを溺愛している
起訴された息子を絶対に救うと決心するが…………
演じるのは「オール・アバウト・マイ・マザー」のセシリア・ロス
母親の愚直さと苦悩を見事に演じている
グラディス
住み込みの家政婦
3歳の息子がいる
まともな教育も受けられなかったため、文字もロクに書けない
殺人犯として逮捕されるが…………
思いださせる映画
「息子のしたこと」
Netflixオリジナルのスペイン映画
瀕死を負わされた息子
医師である父親は、犯人への復讐を誓うが…………
父親の息子への深い愛情と愚かさが描かれる
そして明かされる絶望的な真実
衝撃の一作
「母なる証明」
息子が殺人罪で逮捕された
母親は無実を証明するために奔走するが…………
「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督の超傑作
キム・ヘジャの鬼気迫る熱演が凄い
ラストも衝撃的
愚かな母親
アリシアの息子ダニエルが、どう見てもクズ
薬物中毒で仕事もせず、妻や息子に暴力をふるい逃げられた
救いようもない男である
父親のイグナシオももう呆れ果て、見放している
ところが母親のアリシアだけは違った
アリシアにはいつまで経っても可愛い息子なのだ
ダニエルは元妻のマルセラの罠にはめられたと訴えるが、この男が悪いのは一目瞭然
だが、アリシアにはそれが分からない
無実の息子を何としてでも救おうとする
そのためなら財産ですら投げ捨てる
母親の愛情と愚かさを、まざまざと見せつけられた
そしてアリシアは息子のために、越えてはいけないラインすら超えてしまう…………
複雑な構成
この物語は二つの異なる裁判の法廷が、並行して描かれる
一つはアリシアの息子ダニエルの法廷
もう一つは殺人罪で起訴された家政婦グラディスの法廷
アリシアはどちらの法廷にも出廷することになる
何の前置きもなく時間が飛んだり戻ったりするので、最初は混乱した
この辺りはもう少し工夫が欲しかった
人によってはイライラさせられるだろう
だが、このような構成にした意図は分かる
この物語を時間軸通り描いたら、かなり退屈なものになっただろう
非常に単純で地味なストーリーだからだ
複雑な構成にも後半には慣れて、物語に集中することが出来た
ダニエルの事件とグラディスの事件
なぜ並行して描いたのか
それはクライマックスで明かされる
贖罪
この物語の真相は、ミステリーとしては特筆するべきものはない
おそらく誰もが予想できただろう
この映画の主題はそこではないのだ
重要なのはこの絶望的な真実を、アリシアがどう受け止めたか
息子が犯した罪
それを知っても、息子を盲目的に愛するのか
そこからのアリシアの行動は衝撃的だった
苦悩と葛藤
だが、世の中には絶対に許してはいけないことがある
それがたとえ愛する息子でも…………
家政婦のグラディス
ダニエルの元妻マルセラ
男から一方的に虐げられる女たち
こんなことは決して許されないのだ
ラスト、マルセラと和解したアリシア
重い題材から考えると、この映画の後味は驚くほど爽やかだ
気持ちよく映画を見終えることが出来た
まとめ
構成が複雑だが、見ごたえのある一作
セシリア・ロスはさすがの貫禄
複雑な母親の心情を見事に演じている
手を取り合う女たちの姿が感動的だった
とっつきにくい作品だが、時間を費やす価値はあるだろう
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/the_crimes_that_bind_2020
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