大人気ヴィジュアルノベルゲーム「Fate/stay night」の最終ルート[Heaven’s Feel](通称「桜ルート」)の劇場版第2弾
ド迫力のサーヴァント同士の戦い
美しい映像
物語は核心に踏み込んでいく
また前作以上にダークさとハードさが増し、見ごたえのあるドラマが展開
ヒロインである桜のキャラクター描写は圧巻
その心情や心の叫び
もはや神がかっていた
この[Heaven’s Feel] の物語でもっとも重要な分岐点を描いた第二章
前作を見た人、「Fate」という作品が好きな人は必見
映画館の大画面で見るに値する作品である
予告編
作品情報
作品名「Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly」
監督:須藤友徳
キャスト:杉山紀彰、下屋則子、神谷浩史、川澄綾子、植田佳奈
原作:奈須きのこ、TYPE-MOON
上映時間:117分
製作:日本(2019年)
「Fate/stay night」とは
「Fate/stay night」はもともとはゲームブランド「TYPE-MOON」の大人気ヴィジュアルノベルゲームである
僕が「TYPE-MOON」を初めて意識したのは18年前
同人ゲーム「月姫」からだった
当時の「月姫」の衝撃は凄かった
魅力的なキャラクターと世界観
「直死の魔眼」や「真祖」などの強烈なフレーズの数々
クリアするのに100時間はかかる圧倒的なボリューム
夢中になってプレイした
「月姫」は同人ゲームにも関わらず、「真月譚 月姫」としてアニメ化まで果たした
この作品で奈須きのこと武内崇の名はいっきに知れ渡った
ちなみに月姫ヒロインの中で、個人的には琥珀さん推しである(どうでもいい
そしてTYPE-MOONが初の商業作品として、2004年に世に送り出したのが「Fate/stay night」である
Fate/stay night [Realta Nua] PlayStation Vita the Best – PS Vita
「月姫」と比較して、グラフィックもシナリオもシステムも格段にパワーアップ
18禁のPCゲームだったが、爆発的にヒットした
コミック化、アニメ化、様々なスピンオフ作品も生まれた
「Fate/Grand Order」としてスマートフォン向けゲームにもなった
ここまで息の長い人気を誇る作品になるとは、当時は夢にも思わなかった
[Heaven’s Feel](桜ルート)とは
とある地方都市「冬木市」
そこではあらゆる願いを叶えるという「聖杯」を巡って数十年に一度、七人の魔術師(マスター)と七騎の使い魔(サーヴァント)が最後の一組になるまで殺し合う「聖杯戦争」を繰り広げていた
ヴィジュアルノベルゲーム「Fate/stay night」は三つのルートに分かれている
Fate(セイバールート)
「Fate/stay night」の基本ともいえる物語
マスターの衛宮士郎とサーヴァントのセイバーが、共に協力し「聖杯戦争」を勝ち抜いていく姿が描かれる
いわば王道のストーリーである
Unlimited Blade Works(遠坂凛ルート)
基本となるセイバールートに比べて、こちらは応用編ともいえるルートである
士郎は本来は敵である凛と手を組み、聖杯戦争に挑む
主人公である士郎をもっとも掘り下げたルートでもある
Heaven’s feel(間桐桜ルート)
上記2つのルートに比べて、マスターやサーヴァントが次々と退場したり、セイバーが敵に回るなど、かなりの異色作
聖杯の謎が明かされるルートでもある
また本来描かれるはずだったイリヤルートも一緒にされたため、三つのルートの中でもっとも長い
「Fate/stay night」はセイバールート、凛ルート、桜ルートの順番に読み進めるように構成されている
そのため、いきなり「Heaven’s feel」を見るより、すでにアニメ化されているセイバールートや凛ルートを前もって見ておく方が、より楽しめるだろう
実はこの桜ルートはファンの間で賛否両論もあったのだが、個人的には一番好きなルートである
先を読ませない定石破りの展開が斬新だった
ヒロインの中では桜がいちばん好き(聞いてない
ufotable
本作の製作を手掛けているのはufotableである
ファンにとってはおなじみだろう
「Fate/Zero」「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]などTYPE-MOONのアニメといえばここ
Fate/Zero Blu-ray Disc Box Standard Edition
Fate/stay night [Unlimited Blade Works] Blu-ray Disc Box Ⅱ【完全生産限定版】
TVアニメとは思えない質の高さに度肝を抜かれた
また奈須きのこ原作の「空の境界」シリーズも製作している
スタッフもTYPE-MOONの作品にはかなり思い入れがあるようだ
この「Fate/stay night [Heaven’s Feel] II.lost butterfly」も前作以上のハイクォリティの映像を見せてくれる
もはや理想のアニメ化といってもいいだろう
個人的にはufotableで好きな作品は「住めば都のコスモス荘」
あの作品、大好き
感想(ここからネタバレ)
セイバーを失うという衝撃的な場面から始まる本作
だが、士郎はサーヴァントがいなくても、身体一つで聖杯戦争に身を投じようとする
サーヴァント
劇場版だけあって、本作のサーヴァントの戦いはド迫力である
英霊であるサーヴァントは人間とは別物なのだと、まざまざと思い知らされる
大画面に見劣りしないクォリティだった
前半の最大の見せ場は、影に飲み込まれ敵に回ったセイバーオルタとバーサーカーの戦いだろう
怒涛のアクションに瞬きする間もなかった
素晴らしいのはバーサーカーの頑張り
マスターであるイリヤの期待に応えようと、絶命しても何度も何度も蘇りセイバーに向かっていく姿は感動的でもあった
そして、顔色一つ変えずにバーサーカーを容赦なく葬るセイバー
今まで頼もしい味方だったセイバーが、敵に回るとここまで脅威的な存在になるとは
その後に行われるアーチャーと真アサシンとの戦いも見どころである
ここではとにかくアーチャーが格好いい
身を挺して凛たちを逃がそうとする姿は、惚れ惚れするほどだ
そして、アーチャーも黒い影に飲み込まれ退場
凛ルートでは主役のような存在感だったアーチャー
原作でもそうだったが、早すぎる退場は衝撃だった
今回は桜ルートだけあって、ライダーの出番が大幅アップ
他のルートではすぐにやられる印象のライダーだが、桜を陰から支えるいいお姉さんになっている
一緒に食卓でご飯を食べるシュールな絵も良かった
これでライダーファンも増えたことだろう
サーヴァントといえば、みんな大好きギルガメッシュ!!
セイバールートと凛ルートでは散々苦しめてくれたラスボスである
そのチートな能力はもはや呆れを通り越して笑ってしまう程
その最強のサーヴァントのあっけない最期
原作を知らない人は度肝を抜かれただろう
イリヤ
桜ルートはイリヤルートも融合されているため、イリヤの出番が多いのも嬉しいところ
ルートによっては「バーサーカー、やっちゃえ!!」と殺しにくるイリヤ
惨殺されバッドエンドも見せられた
だが、このルートではかなり士郎に友好的
「お兄ちゃん」といって、無邪気に慕ってくる
基本的にシリアスな場面の多いこの[Heaven’s Feel]
そんな中でイリヤの存在は癒しであり、貴重だった
間桐慎二
ワカメと呼ばれ、ファンからも愛されている慎二
今回も見事な小者っぷりを見せてくれる
そのキレた演技は、神谷浩史の熱演も相まって、もはや名人芸の域
なんか笑ってしまった
こいつが桜にしたことは絶対に許せないが、ちょっと同情してしまうのも事実
どこか憎めないキャラクターである
遠坂凛
マスターとしてアーチャーを従える凛
本作では士郎の良き協力者となっている
凛は桜の実の姉
幼少時に間桐家に養子に出され、ずっと苦労をしてきた桜に負い目を感じている節がある
また士郎を巡って、姉妹で微妙に三角関係になっているのも見どころの一つ
桜に「姉さん」と呼ばれて、喜びを隠せない姿が可愛かった
だが、魔力を制御できない桜を始末しなければならない
姉として苦悩する姿も描かれた
衛宮士郎
10年前の大火災でたった一人生き残った士郎
それ以来、ずっと本気で正義の味方を目指してきた
だが、このルートでは士郎は決断を迫られる
可愛い後輩であり妹のような存在だった桜
彼女の正体は魔術師であり、ライダーのマスターだった
それだけではなく彼女の中の強大な力は、魔力を求めて無関係な人間まで襲ってしまう
桜は倒すべき敵なのだ
守るべきは世界か、少女か
士郎は決断する
世界が許さなくても、俺だけは許す
目の前のたった一人の女の子のための正義の味方になると
実は僕はこの衛宮史郎という主人公が苦手だった
自己犠牲の権化
本気で正義の味方を目指す少年
その願いは病的なほどである
正直、感情移入しにくかった
しかし、この桜ルートの士郎は今までと違った
好きな女の子を守りたい
そのために世界を敵に回してもいい
もの凄く人間的だと思った
僕は士郎がちょっと好きになった
桜のための正義の味方になる
その決断が士郎を苦悩させることになる
間桐桜
本作の桜は素晴らしい
士郎を慕う無邪気な顔
恥じらう表情
自分には士郎のそばにいる資格がないと苦悩する姿
絶望
士郎を自分だけのものにしたいという独占欲
魔力を求めて無意識に街の人を惨殺する狂気の姿
様々な表情を見せてくれる
もはやアニメと思えないほど、画面に情念がこもっていた
また今回の桜はやたらとエロい色っぽい
カップルで来てたら、気まずくなること間違いなしだ
見ていてゾクゾクした
アニメでここまで表現できるとは
スタッフのこだわりに感服
桜愛がスクリーンからにじみ出ている
物語の中盤からはサーヴァントの出番も減り、桜に焦点が当てられる
だが、退屈ということはない
健気で、脆く、危うい存在の少女
その圧倒的な存在感
下屋則子の神がかった演技もあって、突出したものとなっている
完全に劇場が桜に支配されたような錯覚を覚えた
これはTVでは表現できないかも
まとめ
3部作の2作目というのは難しいものである
途中から始まり、途中で終わる
場合によっては中途半端な出来になることも珍しくない
だが、本作は完全に前作を越えてきた
とにかく全編からスタッフの気合が伝わってくる
そして、物語的にも3部作のピークといっていい出来栄えになっている
もちろん「Fate/stay night」の基礎知識は知っておくべきだが、単体で見ても高いクォリティである
「Fate」シリーズを作り続けてきたufotableのまさに集大成
これは劇場で見る価値がある
そして、続篇である最終章は2020年の春に公開
と、遠すぎる………………
allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=365064
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