「万引き家族」ネタバレ感想 パルムドール受賞作品が放つ重い一撃!!

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今村昌平監督の「うなぎ」以来、カンヌ映画祭で日本映画として21年ぶりに最高賞のパルムドールを受賞した本作
見る前はお祝いムードに乗っかって素晴らしいと絶賛すべきか
パルムドールなど関係ないねとちょっと格好つけたレビューを書くべきか迷ったが(最低の葛藤だな
そういう安っぽい次元の映画ではなかった
「万引き家族」は心底愛おしくて哀しくて、そして恐ろしい映画だった

予告編

『万引き家族』予告編

作品情報
作品名「万引き家族」
監督:是枝裕和
キャスト:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、樹木希林
上映時間:120分
製作国:日本(2018年)

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ざっくりあらすじ

高層マンションの谷間にひっそりと佇む古い平屋
そこには治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀、家主の初枝が暮らしていた
治の日雇いの賃金では生活が成り立たず、彼らは初枝の年金と万引きで生活費を賄っていた
ある日、近所の団地の廊下で震えていた幼い女の子を治が連れて帰る
ゆりと名乗るその女の子は両親から虐待を受けていた
治たちはゆりの面倒を見て、一緒に暮らし始めるのだが…………………

感想(ここからネタバレ)

映画を見終わった帰りにコンビニに寄ると、幼い兄妹がいた
こっそり万引きをしてるんじゃないかとドキドキした(映画の影響受けすぎだろ
それほど万引きの描写がリアル
こういうやり方もあるのかと、すごく勉強になった(何の勉強!?

パルムドール

日本映画が21年ぶりにカンヌ映画祭でパルムドール受賞!!
歴史的な快挙である
さぞ劇場には観客が押しかけているだろう
仕事が長引いて、上映開始直前に慌てて劇場に着いたのだが………………

ぶっちゃけガラガラだった
好きな席を選び放題
あれ!? 初日なのに!?
パルムドール受賞作品だぞ!!
どういうこっちゃ?

だが、冷静に考えれば無理もない
まず大スターが出ていない
福山も役所も広瀬すずも長澤まさみもジャニーズも出ていないのだ
正直、役者の顔ぶれが地味である
そして「万引き家族」というタイトル
このタイトルで見に行こうという観客がどれだけいるのか
「名探偵コナン ゼロの万引き家族」というタイトルなら客が押し寄せたかも知れないが(無理やりすぎだろ

僕が見た夕方の回は客が30人ほど
これでも多かったのかも知れない
パルムドール受賞がなかったらどうなっていたか
考えただけで恐ろしい

万引き一家

序盤、初枝の年金と万引きで何とか生活を営む柴田家の生活が描かれる
治は工事現場で日雇いの仕事の最中、足を怪我するが労災も下りず
妻の信代はクリーニング工場で働くがパートで実入りも少ない
妹の亜紀はJK見学店でいかがわしい仕事
息子の祥太は学校にも通っていない

「デッドプール2」最高っ!! ヒャッハー!!

………………などと、昨日まで言ってた人間にはキツイ序盤である

治は両親から虐待を受けていたゆりという女の子を連れて帰り、家族として暮らし始める
徐々に明るい表情を見せるようになるゆり
柴田家は貧しく口も悪いが笑いが絶えない

こんな生活が長く続くはずがない
破綻するのは目に見えている
つねに破滅の予感をはらみながら物語は進んでいく

キャスト

リリー・フランキー
生活力がなく盗みしか能がない父親を演じる
本当に駄目な人間で社会の最底辺の男だが、情に厚く子供たちに愛情を降り注ぐ
「そして父になる」に続いて、リリー・フランキーしか考えられない役柄

安藤サクラ
現実主義だがたくましくて世話焼きの母親を演じる
カンヌ映画祭で審査員から絶賛されただけあって、安東サクラは圧倒的な存在感
もっと綺麗どころの女優が演じていたら、この生活感は出せなかっただろう
早くも今年のアカデミー主演女優賞は決まった感がある

樹木希林
飄々としていて一筋縄ではいかない家主を演じる
安定の存在感
本人はインタビューで自分がこんなに忙しいのはおかしい、と嘆いていたが、代わりが務まる女優といってもちょっと思いつかない
樹木希林演じる初枝の死が、この家族を一気に崩壊に導いていく

是枝裕和

本作で名実ともに日本を代表する監督になった是枝裕和
長年のテーマである「家族」に今回は「犯罪」を組み合わせ、映画としてもスリリングなものになった
今回は本当に自分がやりたいものをやっている感じ
フジテレビの資金でここまで好き放題やるとは脱帽

監督作品
「そして父になる」

本作ともつながりの深い作品
子供を取り違えられた二組の家族を描く
リリー・フランキーはここでも生活はだらしないが、子供を愛情いっぱいに育てる父親を演じる

「そして父になる」の感想はこちら

「誰も知らない」

12歳の長男役を演じた柳楽優弥が第57回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞
母親に置き去りにされた4人の子供たちが兄弟だけで生きていく姿を描く

子役たち

この「万引き家族」は城桧吏演じる祥太の成長物語ともいえる
城桧吏の顔立ちはどこか柳楽優弥を彷彿とさせる
リリー・フランキー演じる血のつながらない父親を心から尊敬し、彼に倣って万引きを繰り返す祥太
柄本明扮する駄菓子屋の店主が「妹にはやらせるな」と諭すシーンは印象的
それが祥太が家業に疑念を抱くきっかけになる

そして、もう一人の子役、佐々木みゆ演じるゆり
親から虐待を受けながらも優しい心を失わない少女
柴田家で共に暮らして明るさを取り戻していく姿が印象的
一生懸命自分も万引きを覚えようとする姿もいじらしい

やはり是枝監督は子供を描くのが抜群に上手い

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追い詰められる万引き家族

犯罪というで結ばれた家族
子供を学校にも行かせず、まともに仕事もしない
そして「店の商品は誰のものでもない」とうそぶき万引きを繰り返す
彼らは許されない存在である
そんな「万引き家族」にあっさり崩壊が訪れる

ここからの展開は本当に恐ろしい
社会は正しさという物差しで一方的に「万引き家族」を追い詰める
子供は学校に行くべき
子供は実の両親と暮らすべき
血のつながりのない者同士が家族として生活するのは間違っている

むろん彼らの言うことは圧倒的に正しい
だが、柴田家には笑いや思いやりが溢れていた
そのことには見向きもせず正義の名のもとに一方的に糾弾するのだ
正しさだけが常に正解なのか?

そこで思い出したのがこの映画

「ゴーン・ベイビー・ゴーン」
ベン・アフレック監督の名作である
私立探偵の主人公は行方不明の幼い少女を探す
だが、少女を誘拐した犯人の動機は育児放棄を見かねてのものだった
無責任な実の親に少女を返すのが本当に正しいのか
この作品のラストはほろ苦い

そして、この「万引き家族」のラストも苦い味わいである
家族はバラバラになり、祥太は施設へ、ゆりは全く反省の色がない両親の元へ返される
バスで一人立ち去る祥太
宙を見つめるゆりの眼差し
救いもないまま映画は幕を閉じる
明るくなった映画館の観客は誰もが無言だった

一体、何が正解だったのか?
映画は何の答えも示してくれない
観客はその問題を投げつけられて、映画館を出ることになる

まとめ

体の芯まで届く重い一撃である
感動とか家族の絆とか、そんな言葉ではこの映画は言い表せない
正直、好き嫌いは激しく分かれると思う
しかし、日本映画の最高峰の作品の一つであることは疑いようもない
実際に街にこんな家族がいるのではないか
そう思わせるだけのパワーを持った作品だ


Manbiki kazoku (2018) on IMDb


allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=363357

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