「そして父になる」感想 血のつながりか、過ごした時間か

是枝監督、「万引き家族」のカンヌ映画祭でのパルムドール受賞おめでとう!!
本当に素晴らしい快挙である
さて、僕は是枝監督の作品を1本も見たことないわけですが(最悪だ
このニュースで慌てて1本見ました

予告編

作品情報
作品名「そして父になる」
監督:是枝裕和
キャスト:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー
上映時間:120分
製作国:日本(2013年)

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ざっくりあらすじ

大手建設会社のエリート社員、野々宮良多は妻みどりと6歳になる息子・慶多との3人で何不自由ない生活を送っていた
ところがある日、病院から電話が
息子の慶多が赤ん坊の時に取り違えられた他人の子だというのだ
相手は群馬で小さな電器店を営む斎木夫婦
両家族は戸惑いつつも、今後のことについて話し合うことになるのだが…………………

感想(ここからネタバレ)

圧倒的な力量!!
脚本、演出、演技、編集、音楽
全てが高い次元にまとめられている
TVドラマやコミックの映画化ばかりの邦画に嫌気がさして、最近は好きな監督の作品しか見なくなっていたが、予想以上のクォリティで驚いた
これだけの実力の監督の作品を今まで見逃していたとは恥ずかしい
素直にそう思った

冒頭

エリートである福山雅治演じる野々宮
その妻みどりと息子の慶多
慶多の小学校受験
仕事で取り組んでいる再開発プロジェクト
高級マンションでの3人の生活

序盤は驚くほど何も起きない
では退屈かというと全くそんなことはない
端正な画面
穏やかなようでどこか不穏な3人の生活
すごくしっくりくる編集のリズム
吟味された自然なセリフの数々
美しい音楽
驚くほど豊潤である
そして、病院から連絡があり、息子が自分の子供ではないことが判明する

急転

驚いたのは病院の関係者からその事実を野々宮夫婦が告げられる場面
当然、立ち上がって怒鳴ったり、奥さんが泣き出したりするだろうと思っていた
その方がドラマチックだから
ところがそんなことは起きない
夫婦は黙って話を聞いている
そのことが逆に現実を受け止めきれない二人の戸惑いを明確に伝えてくる

野々宮良多

福山雅治演じるこの作品の主人公の野々宮良多はぶっちゃけ嫌な奴である
エリート意識が強く上昇志向
仕事に夢中で家族を顧みない
常に正論を他人に押し付け、間違いを許さない
弱者や貧しい人間を見下す男である

だが、嫌な奴ではあるが悪人ではない
そのバランスが絶妙
実際にリアルでも見かけるタイプなのだ

野々宮が問題なのは自分が上手く父親をやっていると思い込んでいること
間違っているかもとは露ほども疑わない
家族が抱える様々な問題がこの男には見えていないのだ

福山雅治

僕は役者としての福山雅治が苦手だった
どうも演技が薄っぺらい気がするのだ
全てをさらけ出していないような、そんな感じ

だが、この野々宮良多にはぴたりとハマっていた
嫌な奴を演じると、すごく上手いですね!!(ええっ
福山の生活感のなさや薄っぺらさ
そんな彼が父親を演じる
そのミスキャストな感じが、父親になり切れない野々宮という男にまさに適任だったのだ

出演作

「マンハント」
大好きなジョン・ウー監督作品
福山のアクションはなかなか決まっていた
「マンハント」の感想はこちら

尾野真千子

野々宮の妻みどりを演じる
おとなしい性格でエリートの夫を献身的に支える
息子の慶多を溺愛していたため、今回の事件で実の息子の琉晴との愛情の板挟みに苦しむことになる
母親の強さと弱さを見事に表現した
世の男性が見たらゾッとするシーンも

リリー・フランキー

子供を取り違えられた相手の父親、斎木雄大を演じる
この斎木という男は野々宮とは正反対
小さな電器店を営んでいるが、貧しくて仕事もいい加減
病院から慰謝料を搾れるだけ搾り取ろうというしたたかなところもある
だが、3人の子供達には優しい父親である
斎木家はつねに笑いが絶えない

「万引き家族」

リリー・フランキーはここでも父親を演じる

「万引き家族」の感想はこちら

真木よう子

斎木の妻ゆかりを演じる
勝ち気で明るくて、いいお母さん
駄目な夫を尻に敷く
この人が出てくるだけで、画面の雰囲気が明るくなった

自然な演技

とにかく子供たちの自然な演技が素晴らしい
ドキュメンタリー出身の是枝監督ならではだろう
もはやどこまでがシナリオ通りなのかも分からない
それが画面に活気や驚きを与え、見ていて飽きない
大人たちの演技やセリフも自然で、フィクションを見ているということを忘れそうになる

ホームドラマ

正直言って僕はホームドラマが苦手である
監督で言えば小津安二郎より断然、黒澤明派だ
やはりダイナミックさやメリハリがある方が好きなのだ
それが是枝監督の作品を敬遠していた最大の要因である

しかし、実際に見てここまでの完成度だと、素直に素晴らしいと言わざるを得ない
映画芸術の一つの高みまで到達している感がある
本当に豊潤な映画体験をさせてもらった

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ラストシーン

この作品では盛り上がるところを極力抑えようとしている節がある
普通ならもっと泣かせにきそうな場面も控えめだ
個人的にはその節度は心地よかった
だが、気になったのはラストシーン
血のつながりか、共に過ごした時間か
本当の親子とは何なのか
この作品はどういう結論を出すのか興味深く見ていた
しかし、その答えは観客に委ねられた
ラストは曖昧なまま終わったのだ

そこで思い出したのがこの映画

「パパVS新しいパパ」
ウィル・フェレルとマーク・ウォールバーグ主演
なぜ日本で未公開になったのか分からない傑作コメディ
ちなみに米国では大ヒットして続編も作られた
この作品は子供を取り違えたわけではないが、親子にとって大切なのは血のつながりかどうかを描いている
そして最後はハッピーエンドで、この作品なりの答えを出している

パパ VS 新しいパパ(字幕版)

どちらのラストの方が優れているというわけではない
だが、ラストを観客に委ねるのは誠実ではあるが、作り手が出した答えを見せてほしかったという気持ちもある
この点は好みの問題なのだろう

まとめ

といっても、「そして父になる」がほとんどケチをつけるところのない素晴らしい作品だというのは変わらない
これだけの力量を持った監督が日本にいたとは完全に盲点だった
カンヌでパルムドールを受賞したのも納得
ちょっと過去作を追いかけてみようと思う


Soshite chichi ni naru (2013) on IMDb


allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=345678

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