「パラサイト 半地下の家族」あらすじとネタバレ感想 得体の知れない傑作!!

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強烈な一撃である
ほとんどの映画は見終わって1時間もすれば、頭の中から消える
だが、この「パラサイト 半地下の家族」は、見てから一晩経ってもこびりついたように離れない
それどころか、ますます存在が大きくなっているようにすら思える
まるで頭の中に寄生されたかのように
なぜこの作品が世界中で絶賛されているか分かった気がする
まさにポン・ジュノ監督の最高傑作
貧富の格差
失業
住居環境
現代に内包する様々なテーマが読み取れる
でも重要なのは、この作品がとにかく面白いこと
その圧倒的なエンターテイメント性が観客をねじ伏せる
この作品のジャンルが何かといわれると、よく分からない
ポン・ジュノ作品ではいつものことだが
ほとんどの観客は、こんな映画を初めて見たと思うだろう
そんな得体の知れない不気味な存在
まるで大きな石のように、心の中に横たわってしまった
これは映画史にとって一つの事件だろう
この唯一無二の作品を誰もが目撃しておくべきだ


予告編

作品情報
作品名「パラサイト 半地下の家族」(原題Parasite)
監督:ポン・ジュノ
キャスト:ソン・ガンホ、チェ・ウシク、パク・ソダム、チャン・ヘジン、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン
上映時間:132分
製作国:韓国(2019年)

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ざっくりあらすじ

半地下のアパートに暮らす貧乏なキム一家。ある日、長男のギウが金持ちの家の娘の家庭教師をやることになって………………

感想(ここからネタバレ)

あまりにも評価の高い本作
見る前は、どんな作品か見当もつかなかったが………………

半地下

様々な事業に手を出し失敗してきた父キム・ギテク
元ハンマー投げの選手で男勝りの母チュンスク
大学受験に失敗し続けている長男ギウ
美大受験に失敗した長女ギジョン
キム一家は4人家族
全員失業中だ

彼らはアパートの半地下の部屋に住んでいる
そこはWI-FIの電波も届きにくく、便所コオロギが飛び回り、酔っ払いが立ち小便をする酷い環境だ
まともな生活がしたい
それが一家の願いだった

ある日、長男ギウのところに友人ミニョクが訪ねてくる
彼は名門の大学生だ

「俺の代わりに家庭教師をして欲しい」

相手は豪邸に住む女子高生
自分は留学するので、後を引き継いで欲しいというのだ

願ってもない話だった
ギウはその話を引き受けた

そこは高台にある大きな屋敷だった
広々としたリビング、気持ちのいい庭
有名な建築家が建てたらしい
住んでいるのはIT企業の社長バク
若く美しい妻ヨンギョ
恋愛に興味津々の高校生の長女ダヘ
いたずら盛りでインディアンにはまっている末っ子ダソン

大学生だと身分を偽っているギウ
だが、ギウの家庭教師としての腕前に、ヨンギョはすっかり信頼しきってしまった
帰り際、ギウは末っ子のダソンが屋敷を走り回っているのを目撃した
ダソンは落ち着きがなくて、美術の家庭教師もすぐに辞めてしまう
ヨンギョがそうぼやいた
その時、ギウはある考えが閃いた

「それならいい先生がいますよ。僕の従兄の後輩なんですが………………」

後日、ギウが屋敷に連れてきたのは、妹のギジョンだった………………

ポン・ジュノ

ポン・ジュノは韓国の若き巨匠である
2003年の監督2作目である「殺人の追憶」は衝撃だった

韓国で実際に起きた未解決連続殺人事件を題材にした作品である
ソウル近郊の農村で、同じ手口で若い女性が次々と殺される
直感頼りの地元の刑事と、都会から来た頭脳派の刑事の対立
無慈悲に起こる殺人
警察の腐敗
焦燥感
降りしきる雨
理不尽な殺人への怒り
社会の闇まで炙り出した刑事ドラマの大傑作である

この作品でポン・ジュノの名前は、強烈に刻まれた
今後も重厚な社会派ドラマを作り続けていくのだろう
そう思った

だから次回作「グエムル 漢江の怪物」には心底驚いた
まさかの怪獣映画だと!?
この監督、底が知れない
もうこの時点で、すっかりポン・ジュノ監督の虜になっていた

あるマンションの子犬失踪事件を描いた監督デビュー作「ほえる犬は噛まない」
息子の無実を証明しようとする母親の愛情と執念と狂気を描いた「母なる証明」
氷河に覆われた地球で残された人類の列車の中での階級闘争を描いた「スノーピアーサー」
友達オクジャを救おうとする少女の冒険を描いたNetflixオリジナル映画「オクジャ okja」

まさに傑作ぞろい
ミステリーからSFまで
ジャンルにとらわれない姿勢は、スタンリー・キューブリックも彷彿とさせる

ポン・ジュノ作品はジャンル映画である
刑事ドラマである「殺人の追憶」
怪獣映画である「グエムル 漢江の怪物」
ミステリーである「母なる証明」
SF映画である「スノーピアーサー」
ファミリー映画である「オクジャ okja」
この「パラサイト 半地下の家族」も犯罪映画と区分することが出来るだろう

だが、ポン・ジュノ作品はつねにジャンルをはみ出す
最終的には見たことのない地点に到達する
入り口は広く、出口は狭い
終わってみればジャンルにくくれない独創的な作品となっている

ポン・ジュノ作品は社会派である
いつも貧富の格差が描かれる
それを許容するこの世界とは何なのか
つねに観客に問いかけている
資本主義である現代を描くには、避けては通れないと監督は言う
この「パラサイト 半地下の家族」は、もっともそのテーマが前面に出たものとなっている

ポン・ジュノ作品はとにかく面白い
社会や人間の本質が描かれるが、説教臭さは微塵もない
それらのテーマを全てエンターテイメントとして昇華させている
まるで最高に脂がのっていた時の黒澤明のようだ
社会派とエンターテイメントの融合
芸術性と娯楽性
普通はどちらかに偏ってしまうものだ
だが、ポン・ジュノは全てを取り込んで、1本の作品にしてしまう
並みの才能ではない

ポン・ジュノ作品はすっきりしない
いつもモヤモヤした結末を迎える
映画の中で完結しないのだ
そのため見終わった後も、観客は未消化のものを引きずって、家路に向かうこととなる
後は自分たちで補完するしかない

ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞で作品賞を受賞!! さらには監督賞、国際長編映画賞、脚本賞と4冠 アジア映画...

キム一家

半地下に住み、全員失業中で貧しいキム一家
しかし、彼らには妙なバイタリティがある
這い上がろうとする執念が凄まじい
貧しい者たちだが、単なる弱者として描かれていない

長男ギウを演じたチェ・ウシクが素晴らしい
最初の印象は頼りなくて冴えない青年
ところが家庭教師として入り込んだバク家で、思わぬ才能を発揮する
人当たりの良さ、頭の回転の速さ、口の上手さ
そうして次々と自分の家族を、バク家に送り込む

運転手を罠にはめて、解雇させる
昔からの家政婦を追い出す
バク家に一家が入り込む手口が絶妙
まるで犯罪映画を見ているかのようだった

そして、一家の大黒柱ギテクを演じるソン・ガンホの存在感はさすが
失業中の家長の頼りなさ、情けなさ、したたかさを見事に演じた
最後に怒りが爆発する姿は圧巻

セット

舞台となるバク家の豪邸が素晴らしい
広いリビング
美しい庭
それだけで視覚的な満足感を得ることが出来る

キム一家が住む半地下
窓からは雑踏を歩く人々が映し出される
それを見上げる生活

豪邸、半地下、周りの街並み
それらが全てセットだというから驚き
こぢんまりとしたスケールの印象の作品だったが、実は細かいところまで力を入れて、緻密な計算で作られているのが分かる
クォリティはそうとう高い

格差

差別や身分
そういったものが前時代的なものとして、表面上は取り除かれた現代
だが、格差は依然として存在する

高台に住むバク一家
対して半地下に住むキム一家
そこが底辺だと信じていた
しかし、さらに下があったという展開は衝撃

素晴らしいのは雨の使い方
ポン・ジュノ作品では雨が効果的に使われることが多い
上から下に流れる雨
裕福なバク一家はキャンプが中止になる
その程度の被害
比べて半地下に暮らすキム一家は、住居が水浸しになる

上から下へ
下から上へ
この作品で何度も描かれる暗喩である

悪意の不在

ポン・ジュノ監督が素晴らしいのは、そのバランス感覚
この作品には悪人がいない
他人の家に入り込むキム一家も善人ではないが、悪人というほどではない
要するに普通の人

印象的なシーンがある
自分たちが入れ替わるために罠にかけて追い出した運転手

「あいつ、ちゃんと再就職できてるよな」

ギテクが心配する場面だ
彼らには罪の意識がちゃんとあるのだ
また赤の他人を心配するお人よしでもある

金持ちの家に入り込んだキム一家
それがエスカレートして、最後にはその家を乗っ取る
そういう展開になるのが定石だろう
ところがこの作品は違う

「俺たち、就職できて幸せだー」

キム一家はそこで満足してしまうのだ
バク一家に心から感謝もしている

確かに身分を偽ったり、雇用人を追い出したりした
けれど、家に入り込んでからは、一応は彼らなりに真面目に働いている
この家の人たちを傷つけようなどという気持ちは毛頭ない

対してバク一家もステレオ通りの嫌な金持ちとしては描かれていない
現実には嫌な奴なんていくらでもいる
それに比べるとバク家の人たちは優しいぐらいだ
つねに節度をわきまえ、雇用人に接する
陰で不満を言ったりはするが、決して本人たちに威張ったりしない
むしろ人間のできた人たちだろう

バク家は悪い人たちではない
ただ貧しい人たちに無関心で、自分には関係ないと思っているだけだ

寄生

裕福なバク家に寄生することで、幸せを手に入れたキム一家
しかし後半、衝撃的な事実が判明する
バク家に寄生していたのは自分たちだけではなかった

屋敷の地下にあるシェルター
前の住人である建築家が作ったものだ
そこには以前の家政婦の夫が1人で隠れ住んでいた

どちらがこの家に寄生するか
居住権を賭けた戦いが勃発する
富裕層と貧困層
そうではなく貧しい者同士が争うのが皮肉だ
キム一家は何とか家政婦とその夫を、地下に縛って閉じ込める

崩壊

度を過ぎた行為が嫌い
バクが何度も口にする言葉だ
キム一家とバク一家
同じ空間で何とか均衡を保っていた
お互い度をすぎないように

だが、ついに一線を越えてしまった
それは匂いである
地下に住む人間の匂い
クライマックスでバクは顔をしかめる
それがギテクの蓄積されていた怒りに火をつける
バクは度を過ぎてしまったのだ
ギテクは衝動的にバクを刺してしまう

匂いに顔をしかめたバクに悪意はなかった
人は時に一線を越えてしまう
知らずに相手に屈辱を与えてしまうのだ
無自覚だからこそ恐ろしい

人は本当に分かり合うことは出来ない
そこにはつねに見えない壁が存在する
立場の違う者同士が、共に生きることの困難さ
強烈なクライマックスである

奈落へ

殺人犯として警察に追われることになったギテク
彼は誰もいなくなった屋敷の地下シェルターに隠れた

半地下から地下へ
もう地上へは戻れない
ギテクは落ちるところまで落ちてしまった
いつか父親を救い出す
物語はそんなギウの決意で幕を閉じる

父親は殺人犯
妹は殺された
暗澹たる結末である

大金を稼いで、屋敷を手に入れて、父親を救う
ギウは成し遂げることが出来るのか?
まず無理だろう
世の中はそんな甘いものではない

それでも諦めない
希望はわずかだけ残る
ポン・ジュノは人の意志を信じているのかも知れない

まとめ

強烈な物語である
様々なテーマを内包しながら、エンターテイメントに昇華しているのが素晴らしい
ポン・ジュノ監督の手腕に酔いしれた
2020年のベストが早くも決まってしまったかも知れない
これを超える作品に、果たして今年出会うことが出来るのか
それを考えると複雑な気分だ

ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」がアカデミー賞で作品賞を受賞!! さらには監督賞、国際長編映画賞、脚本賞と4冠 アジア映画...


Parasaito: Hanchika no kazoku (2019) on IMDb


Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/parasite_2019
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/368576

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