Netflix「ROMA/ローマ」感想 ある家族と家政婦の絆

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ヴェネチア国際映画祭(金獅子賞)
NY批評家協会賞(作品賞、監督賞、撮影賞)
LA批評家協会賞(作品賞、撮影賞)

すでに様々な賞を総なめしている作品である
Netflix作品としては快挙だろう
監督はあの「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン
とはいってもモノクロで、内容も地味である
それでいて豊潤でノスタルジック
誰もが心の奥底に眠る記憶を喚起されるに違いない
静かな感動を呼び起こす名作である


予告編

作品情報
作品名「ROMA/ローマ」(原題Roma)
監督:アルフォンソ・キュアロン
キャスト:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、マルコ・グラフ
上映時間:134分
製作国:メキシコ、アメリカ(2018年)

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ざっくりあらすじ

1970年代初頭のメキシコのローマという街。住み込みの家政婦のクレオと彼女が仕える中流家庭の一家の激動の一年を描く。

感想(ここからネタバレ)

あの「ゼロ・グラビティ」の監督の新作が、こんなにこぢんまりした個人的な物語とは意外
壮大な宇宙から自分の原点である故郷へと戻った

ある家族と家政婦

1970年代初頭のメキシコシティのローマ地区
クレオは白人の医師の家庭に家政婦として仕えていた
そこは医師のアントニオ、妻のソフィア、彼らの4人の子供、ソフィアの母テレサの7人家族である
クレオは子供たちの世話、犬の面倒、家事、掃除、洗濯と住み込みで働いていた
そして、休日にはボーイフレンドのフェルミンとデートを楽しんだりもした

家の主人、アントニオがカナダへ仕事で行ったきり戻ってこない
そのせいでソフィアは情緒不安定だった
一方、クレオは生理が遅れているのを気にしていた
フェルミンに話すと、彼はそれ以来姿を見せなくなった
クレオはソフィアに病院に連れて行ってもらった
彼女は妊娠していた………………

床が映されるファーストカット
ブラシでこする音が聞こえ、洗剤まじりの水が何度も流される
その長いカットから、不思議と作品に惹きこまれる
「ゼロ・グラビティ」のような大宇宙ではないが、この作品では家族という宇宙が描かれる

登場人物

クレオ
若い家政婦
田舎から出てきた
フェルミンというボーイフレンドがいる

ソフィア
クレオの主人
夫の不在で精神が不安定になっている

アントニオ
ソフィアの夫
医師で長い間、家を留守にしている

フェルミン
クレオのボーイフレンド
武道をたしなんでいる

監督

アルフォンソ・キュアロン
この「ROMA/ローマ」はアルフォンソ・キュアロンの半自伝的な物語となっている
監督いわく物語の90%は自分の記憶を元にしているとのこと
またこの作品はクレオのモデルとなった自分の家政婦リボに捧げられている
ちなみにリボはまだ健在で、監督の家族と親密な関係を維持しているという

代表作

「ゼロ・グラビティ」
宇宙空間に投げ出されてしまった宇宙飛行士たちの極限状況を描く
美しくてリアルな映像に世界が度肝を抜かれた
本当に宇宙にいるような疑似体験を味わえる
アルフォンソ・キュアロンの文句なしの代表作である

モノクロ映画

この「ROMA/ローマ」は今となっては珍しいモノクロ映画である
映像がデジタルへと進化している現代、あえて白黒で映画を撮るというのはよっぽどの理由が必要だ
その点、本作は過去のメキシコシティを追体験させるということにおいて、抜群の効果を上げている
まるで当時の映像をそのまま見ているような錯覚に陥った
そして、かつてのモノクロ映画の傑作たちが、何度も頭をよぎった
リスクを承知でモノクロで撮った監督の決断は間違っていなかったようだ

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素晴らしい演技

主役のクレオを演じたヤリッツァ・アパラシオ
ソフィアや4人の子供たち
街の人々
この作品の役者陣は自然で素晴らしい演技を披露している
驚くことに彼らは母親のソフィア役を演じるマリナ・デ・タヴィラ以外は、全員が素人である
本物の医者や受付嬢など、エキストラが起用された
主役のヤリッツァ・アパラシオはもともとメキシコの学校の教師で、彼女の子供たちへのあふれる愛を感じ取り、監督が大抜擢したそうだ
撮影も役者に台本を渡さず、ほぼアドリブだったらしい
そうとは思えない完成度である

美しい映像

メキシコ出身のカメラマン、エマニュエル・ルベツキ
「ゼロ・グラビティ」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」「レヴェナント 蘇えりし者」
初めて3年連続でアカデミー撮影賞を受賞した名匠である
キュアロン監督は本作で再びルベツキとタッグを組む予定だったが、撮影スケジュールの都合で断念
何と監督本人が撮影監督を務めた
撮影には6Kの65mmデジタル・シネマカメラ「ARRI ALEXA 65」が使用され、鮮明な映像を実現
キュアロン監督は主観的な作品にならないように、多くのシーンをワイドショットで撮影した
またセットとして使われた家も、監督の育った家に限りなく近づけ、家具なども集めたようだ
そのこだわりは映像に反映され、タイムスリップしたかと錯覚するぐらい、当時のメキシコを再現している
本作は様々な映画祭で撮影賞を受賞している

当時のメキシコ

1971年6月10日の学生運動弾圧事件「血の木曜日」
人種差別や階級社会
様々な当時のメキシコの背景が、クレオの目線を通して描かれる
キュアロン監督は当時のメキシコを描きながら、現代の移民問題や人種差別に対して問題提起している
そして、絆や愛こそがそれらの問題を乗り越えるのに必要だと訴えているのだ
どの時代にも通用する普遍的なテーマである

女性への敬意

この「ROMA/ローマ」という作品の根底には、女性たちへの尊敬と共感がある
クレオもソフィアも男たちに振り回される
社会的に立場の弱い女性
傷つけられたり、裏切られたりもした
だが、最終的に二人とも立ち上がり、愛によって家族や子供たちを支えていこうとする

一方、女性陣に対して男性陣は身勝手な存在として描かれる
ソフィアの夫のアントニオ
彼は愛人を作り、家族を捨てる
クレオのボーイフレンド、フェルミン
彼は子供が出来たと言われると逃げ出し、追いかけて訪ねていくと逆ギレして「この召使い風情が!!」とののしる
この作品の女性たちに比べると、粗暴で卑小な存在である
そういうやり方はもう通用しないのだということを、この物語は訴えているようだ

家族と家政婦の絆

クレオの赤ん坊は死産だった
彼女は絶望する
そんなクレオを励まそうと、ソフィアは家族旅行に誘う

ビーチでクレオは子供たちを見ていてくれと頼まれる
だが、ちょっと目を離した隙に、子供二人が波に飲み込まれた
クレオは泳げない
だが、必死に海の中に入っていき、子供たちを探す

この場面は映像も物語も凄まじい緊張感である
子供たちは溺れてしまうのか
クレオは波に飲まれながらも、何とか子供たちを見つけ、砂浜まで連れ戻す
驚いて駆け寄るソフィア
クレオは慟哭する

本当は子供なんて欲しくなかった
でも、あの子は死んでしまった
かわいそうに
全てわたしのせいだ

ソフィアや子供たちはクレオにしがみつく

「クレオ、大好き」

溺れそうになった子供たちを救ったことで、クレオの心も救われたのだ

まとめ

まるで過去からタイムスリップしてきたかのような名作である
これほどの作品がストリーミングで配信
映画史に残る出来事だろう
大画面で見たかったという気持ちはある
でも、世界同時配信でいち早く見れるというのは素直にありがたい
今後、映画というもの在り方が大きく革新される
そんな可能性を秘めた作品だ

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Roma (2018) on IMDb


Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/roma_2018/
allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=365907

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