Netflixオリジナルのインド映画
貧民街に暮らす男は、天才少年である息子の名声を利用して這い上がろうとするが…………
いい映画だが、見ていてストレスが溜まった
前半は主人公の身勝手さにうんざり
だが、終盤は主人公の真意が明らかになり、静かな感動を得ることが出来た
主演のナワーズッディーン・シッディーキーはさすがの安定感
そして、子役の演技が凄い
思わず泣かされそうになった
また内容がかなり知的
貧困からどうやって抜け出せるのか
社会派ドラマとしても鋭い仕上がりになっている
親子とはどうあるべきか
子を持つ親なら誰もが身につまされるだろう
一見の価値はある作品だ
予告編
作品情報
作品名「シリアスな男たち」(原題Serious Men)
監督:スディール・ミシュラ
キャスト:ナワーズッディーン・シッディーキー、ナーセル、アクシャ・ダス、インディラ・ティワリ
上映時間:114分
製作国:インド(2020年)
ざっくりあらすじ
貧民街に住む男は、息子の名声を利用しようして這い上がろうとするが…………
感想(ここからネタバレ)
かなり深みのある内容
最近のインド映画には驚かされる
天才少年
マニは国立基礎研究所で、天才科学者アチャリア博士の助手をしている
助手といっても、実際は雑用係だ
科学者たちは自分たちを虫けらのように扱っている
生活も苦しく、マニは妻のオジャと貧民街で暮らしていた
いつかこんな生活から抜け出す
マニはずっとそればかりを考えていた
マニに息子アディが誕生した
アディは天才少年だった
IQは169あり、いつも宇宙や原子のことを話している
アインシュタインの再来と言われ、テレビ局まで取材に来た
マニとオジャは得意満面だった
ある日、政治家がマニのところを訪れた
マニたちが住んでいるスラムを再開発する
住民を説得するのに、アディの力を借りたい
相応の謝礼は払うと
マニにとっては願ってもない話だった
そんな時、アディは同じアパートの友達サヤリが泣いているのに遭遇する
成績が悪いので母親に怒られた
自分はアディのように頭がよくない
落ち込むサヤリを見て、アディは誰にも話していない重大な秘密を打ち明けた
パパがテストの問題をどこからか持ってきてくれる
自分は答えを暗記しているだけだ
宇宙のことも原子のことも、本当はさっぱり分からない
パパに言われたことを、そのまま喋っているだけ
本当は天才少年でも何でもないのだ
そのことを聞いたサヤリは、翌日からアディへの態度が変わった
言うことを聞かないと、本当のことを皆に言いふらす
困ったアディは、マニに相談して…………
作品解説
2010年にジャーナリストのマニュ・ジョセフが書いた同名の小説「SeriousMen」が原作
ちなみに記者会見で、アチャリア博士に最初に質問する記者は原作者のマニュ・ジョセフ自身である
マニ
国立基礎研究所でアチャリア博士の助手を、長年勤めている
頭の回転が速くて、口が立つ
生活は楽ではなく、貧民街に住んでいる
息子のアディを利用して、今の悲惨な状況から抜け出そうとするが…………
マニを演じるのはインドの人気俳優ナワーズッディーン・シッディーキー
Netflixオリジナル映画「孤独の夜」でも主演
こちらもなかなかの傑作
アディ
マニの一人息子
IQ169の天才少年
マスコミに取り上げられ、世界的に有名になる
だが、全てが父親マニが仕組んだ偽りだった
その嘘が少しずつアディの心を蝕んでいく
演じるアクシャ・ダスの演技が凄い
まさに天才子役という感じ
スピーチのシーンなど圧巻
シリアスマン
マニが勤める国立基礎研究所
優秀な科学者たちが集い、宇宙の研究をしている
しかし、彼らはマニたち助手や事務員のことを人間扱いしていない
取るに足らない低能な連中だと思っているのだ
代わりにマニたちも科学者のことを”シリアスな男たち”と馬鹿にしている
ずっと虐げられてきたマニ
国立基礎研究所は国の最高の研究機関だが、現実の社会と変わらない
そこには格差が存在するのだ
いつか逆転してみせる
たとえどんな手段を使ってでも
マニはそう誓うのだが…………
父と子
息子アディを天才少年に仕立て上げる
それは最初はアディのためだった
息子を自分とは違い、”シリアスな男たち”の側に立たせたい
自分のようなみじめな思いをして欲しくなかった
しかし、思い通りに事が運び、マニは世間の息子への称賛に酔いしれるようになる
一方、アディは嘘をついていることへのプレッシャーに、心を蝕まれていく
我が子への理想の押し付け
高い要求
一方的な期待
親子とはどうあるべきなのか?
マニとアディの姿に身につまされる人も多いだろう
作品の評価
アディが実は天才ではないと明らかになるシーンは、本当に驚いた
まんまと騙された
この辺りのストーリー運びは巧みだった
実の息子を天才少年に仕立てる
前半は主人公の身勝手さに、かなりストレスが溜まった
そのため、あまり楽しめなかった
この辺りは好みが分かれそうだ
どん底から這い上がるための壮大な策略
しかし、次々と綻びが生じていく
この辺りの展開はスリリング
また最低に思えた主人公が心情を吐露するラストは、素晴らしい出来栄え
胸を打つシーンに仕上がっている
好きになれない部分もあるが、親子の物語としても社会派ドラマとしても秀逸な出来
インド映画の底力を思い知らされた
埋もれさせるには惜しい作品だ
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