コーエン兄弟の最新作が見れる幸せ
それだけで満足！！
今回は西部を舞台にした初の短編集
コーエン兄弟の技はもはや円熟の域まで達している
6つの物語はバラエティーに富んでいて、コーエン兄弟の引き出しの多さに脱帽
コーエン好き、西部劇好き、オムニバス好きの人は見るしかない！！
予告編
作品情報
作品名「バスターのバラード」（原題The Ballad of Buster Scruggs）
監督：ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
キャスト：ジェームズ・フランコ、ブレンダン・グリーソン、ゾーイ・カザン、リーアム・ニーソン、ティム・ブレイク・ネルソン、トム・ウェイツ
上映時間：133分
製作国：アメリカ（2018年）
ざっくりあらすじ
コーエン兄弟による西部を舞台にした6つの物語
感想（ここからネタバレ）
「トゥルー・グリット」以来のコーエン兄弟による西部劇である
今回は6つのオムニバスになっている
バスターのバラード
バスター・スクラッグスは白い衣装にギターを抱え陽気に歌いながら馬で西部を旅している
彼は物腰が柔らかくお洒落な優男
そんな外見とは裏腹に、バスターはギャンブラーで凄腕のガンマンだった
バスターは自分に危害を加えようとする無法者たちを、目にもとまらぬ早撃ちで片づける
そこへバスターを倒して名をあげようと、黒づくめの若者が現れた………………………………
パワフルで突き抜けたエピソード
1話目から飛ばしている
オムニバスならではのぶっ飛びぶり
バスターのキャラクターが強烈
最後の決闘シーンの斬新な演出も見事
面白くて、あっという間に終わってしまう
バスター・スクラッグスを演じるのはティム・ブレイク・ネルソン
アルゴドネス付近
その若者は銀行強盗をしようとするが、年寄りの出納係に撃退され捕まってしまう
男たちの前で木に吊るされ、処刑されそうになる若者
そこへインディアンが襲ってくる
インディアンは男たちを襲った後、若者を残して去っていった
若者は何とか縄から抜けようとするが………………
ジェームズ・フランコ主演のブラックな短編
銀行強盗に押し入りながら、老人一人に撃退されるのが可笑しい
奇跡的に首吊りから逃れたにもかかわらず、誤解からすぐに首吊りの刑にされる皮肉
主人公は死ぬのだが、何故か悲壮感はない
とぼけた味わいのエピソードである
食事券
男は馬車で見世物をして、旅をしていた
その見世物とは四肢のない身寄りのない若者に、詩や聖書を暗唱させることだった
稼ぎは微々たるものだったが、男と若者は利害の一致でそれなりに上手くやっていた
ある村を訪れると人だかりができていた
男が行ってみると、計算を解いてしまう頭のいいニワトリが人気を博していた
その鶏を男は大枚をはたいて譲り受けた
これで今まで以上に大儲けができる
だが、そうなると身体の不自由な若者は不要だった………………
コミカルだった最初の2話とは打って変わって、寒々しく切ないエピソード
あまりの救いのなさに気が滅入ること間違いなし
不要になった若者を始末した男
普通の作家なら男が最後に痛い目に遭うシーンを加えるだろう
けれどコーエン兄弟はそんなことはしない
男がその後、本当にニワトリで成功したかは観客の想像に委ねる
弱肉強食の西部
世界の非情さと残酷さを思い知らされるエピソードだ
男を演じるのはリーアム・ニーソン
若者を演じるのは「ハリーポッター」シリーズでダドリー・ダーズリー役だったハリー・メリング
別人のように痩せていて驚き
金の谷
年老いているが活力に満ちた探鉱者は、雄大な大自然の中の谷に辿り着いた
金脈を探す老人
なかなか成果が出ない
それでも辛抱強く周囲を掘っていき、とうとう地中深くに金鉱を発見した
何日もの苦労が報われたのだ
だが、その老人が金を発見するのを、息をひそめて待っていた男がいた………………
トム・ウェイツ主演
登場人物は老人と男だけ
このエピソードでは雄大な大自然の風景が存分に楽しめる
根気よく金鉱を探していく老人
地味だが面白いエピソードだ
老人はようやく念願の金を探り当てる
しかし、そこはコーエン兄弟
ただでは終わらない
金を横取りしようとした男を返り討ちにした老人
だが、腹部を撃たれてしまった
それでも金塊を手にして、谷を後にする
老人は無事に町へ辿り着いたのか？
それとも………………
安易にハッピーエンドにしないのがコーエン兄弟だ
早とちりの娘
アリス・ロングバウと兄のギルバートは新天地を求めて、オレゴン州へキャラバンで旅をする
ところがギルバートがコレラで突然亡くなってしまう
途方に暮れるアリス
キャラバンの案内と護衛を務めるビリーとそのパートナーでベテランのアーサーは、彼女の面倒を見る
いつしかビリーとアリスは親密になっていった
ビリーはアリスにプロポーズし、彼女は受け入れる
そんなある日、アリスがキャラバンから離れた場所でくつろいでいると、インディアンに遭遇してしまう
駆け付けるアーサー
アーサーはインディアンたちに一人で立ち向かう覚悟をする
その老ガンマンは彼女に「もし自分が殺されたら、酷い目に合う前に自害しろ」と拳銃を渡すのだが………………
ゾーイ・カザン主演
この作品でもっとも登場人物が多く、ドラマ性が高いエピソード
恋愛が大きく絡むのも、コーエン兄弟の作品としては珍しい
このまま感動的なメロドラマになるのかと思ったら、やっぱりコーエン作品
そうは問屋が卸さない
アリスを守り、一人インディアンの集団に立ち向かう老ガンマンのアーサーが格好よすぎる
この作品でもっともテンションが上がったアクションシーンである
インディアンに斧で斬りつけられ、地面に倒れたアーサー
油断したインディアンを、いきなり起き上がって返り討ちにする
逃げていくインディアンたち
何とか危機を脱した
だが、アリスのところに戻り、アーサーは愕然とする
アーサーが死んだと思い込んだアリスは、自分の額を撃ち抜いていた
「早とちりの娘」
ここは笑うところなのか？
とんでもない悲劇である
でも、コーエン兄弟はどんな悲劇や不幸にもユーモアを見出そうとする
不謹慎だがちょっと笑わずにはいられない
遺骸
馬車に乗った5人の人々
彼らはたまたま同じ馬車に乗り合わせたアイルランド人とイギリス人とフランス人と女性と狩人だ
狭い車内
馬車に揺られる5人
「いつも一人でいるので、話すのは苦手だ」
狩人は長々とどうでもいいことを話し出す
「私は大学教授の夫に会いに行く」
年配の女性も語りだした
3年ぶりに会うらしい
「あんたの旦那はきっと他の女性と仲良くやってますよ」
笑顔でそんなことを言い出したフランス人の男
車内は険悪な空気に包まれた
すると前に座っていたアイルランド人とイギリス人が話し出した
「私たちは賞金稼ぎです。馬車の上には死体が乗っている」
ゾッとした表情で顔を見合わせる3人
馬車は夜の荒野を疾走していく………………
本作の中でもっとも奇妙なエピソード
たまたま同じ馬車に乗り合わせただけのはずが、異様な空気に包まれていく
最後に辿り着いたホテル
遺体を運ぶアイルランド人とイギリス人
顔を見せない不気味な御者
ここは本当に現世なのか
扉を開くと別の世界に繋がっているのでは
特に答えを示すこともなく、物語は締めくくられる
コーエン兄弟らしい、奇妙な味わいを残すエピソードである
6つのエピソード
6本のエピソードに共通するものはない
登場人物や舞台も異なっている
似た部分があるとすれば、どのエピソードでも死が描かれていることだろう
日常に死が当たり前に転がっている西部
主人公の死で締めくくられるエピソードも多い
マンガチックな「バスターのバラード」
皮肉な顛末を笑い飛ばした「アルゴドネス付近」
世界の残酷さを思い知らされる「食事券」
老人の執念を大自然の中で描いた「金の谷」
壮大なメロドラマ風の「早とちりの娘」
オカルト調の「遺骸」
6つのエピソードはバラエティに富んでいる
まさにオムニバスでなければ無理だったろう
コーエン兄弟は短編の名手でもあると、改めて感心させられる
今後もまたオムニバスも見てみたいものだ
個人的にはどのエピソードも甲乙つけがたい
短編の面白さを堪能させてもらった
裏話
最初はTVシリーズとして企画されたという本作
コーエン兄弟が25年に渡って書き溜めていた短編小説が基であるらしい
物語の順番はほぼ執筆順である
撮影監督はいつものロジャー・ディーキンスではなく、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」以来2度目となるフランス人のブリュノ・デルボネルである
133分という上映時間はコーエン兄弟作品で最長となる
まとめ
コーエン兄弟初のオムニバス
存分に堪能させてもらった
この企画を実現したNetflixに感謝
それにしてもコーエン兄弟の引き出しの多さには感服する
オムニバスで西部劇
どちらもコーエン兄弟の作風と相性が抜群だったようだ
彼らの最新作が世界同時にTVで見れてしまうのだから、凄い時代になった
「バートン・フィンク」や「ミラーズ・クロッシング」など近くで上映してなくて、遠くの映画館まで見に行っていたのが懐かしい
「バスターのバラード」
コーエン兄弟のファンなら見逃す手はないだろう
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https://www.rottentomatoes.com/m/the_ballad_of_buster_scruggs/
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http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=366158
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