Netflixオリジナルの韓国ドラマ
誤って人を殺してしまった大学生イ・タンは、腕利きの刑事チャン・ナンガムに追われるが…………
連続殺人を犯すようになる大学生と、それを執拗に追跡する刑事
スリリングで予測不能のストーリー
ささいなことから殺人を犯してしまった大学生イ・タン
こぢんまりとしたサスペンスかと思いきや、物語は思いもよらない方向へ転がっていく
平凡な大学生の日常が壊れていく様をチェ・ウシクが好演
執拗にイ・タンを追う刑事を演じたソン・ソックも渋かった
ひとつの殺人が次の殺人へ
予測不能の物語が凄い
後半の展開には驚いた
編集も秀逸で、印象的なシーンが多かった
次々と殺人を犯す主人公を肯定できるのか?
過激な内容なので好みは分かれそうだ
サスペンスが好きな人にはお勧め
予告編
作品情報
作品名「殺人者のパラドックス」(原題살인자ㅇ난감)
監督:イ・チャンヒ
キャスト:チェ・ウシク、ソン・ソック、イ・ヒジュン
全8話
制作国:韓国(2024年)
ざっくりあらすじ
大学生イ・タンはささいなことがきっかけで人を殺してしまう。刑事チャン・ナンガムはイ・タンを怪しいと直感し、執拗に追跡するが…………
感想(ここからネタバレ)
後半の展開は衝撃!!
「殺人者のパラドックス」
イ・タンは半年前に除隊した大学生
日々を目標もなく、無気力に生きていた
こんな日常から抜け出したい
タンはいつかカナダへ行くことを望んでいた
ある夜、タンがコンビニでバイトをしていると、2人の酔っ払いが入ってきた
その内の1人はタンに絡んできたが、もう1人がなだめた
バイトからの帰り道、タンは路地でさっきの無礼な酔っ払いが、倒れているのに気付いた
そのまま素通りすると、もう1人の親切だった男が道を歩いていた
タンは男に友達が倒れていると伝えた
男は無視しろと言ったが、タンは食い下がった
すると、いきなり男が平手打ちをしてきた
何度も殴られたタンは、たまたま持っていたハンマーで男の頭を殴った
男は倒れて動かなくなった
タンはアパートへ逃げ帰った
殺人を犯してしまった
タンは罪の意識にさいなまれ、眠れない夜を過ごした
そして、自分が現場に凶器のハンマーを置いてきたことに気付いた
翌朝、2人の遺体が発見された
警察は酔っ払い同士が喧嘩して、お互いに殴り合ったのが原因だと判断した
しかし、チャン・ナンガム刑事は納得がいかなかった
ナンガムは2人が事件の前に立ち寄ったコンビニに辿り着いた
そこで店員のイ・タンから話を聞いた
タンは相手が警察だと知り、極度に緊張していた
そんなタンをナンガムは疑わしげに見た
タンは罪の意識にさいなまれ、ついには警察に自首することを決意した
そんな時、テレビのニュースを見て驚愕した
タンが殺した男の名はキム・ミョンジンといい、逃亡中の連続殺人犯だと判明したというのだ
相手が悪人だったのなら、自首する必要はない
タンは自分にそう言い聞かせるが…………
作品解説
原作は人気ウェブトゥーン「殺人のおもちゃ~殺人者のパラドックス」
監督はドラマ「他人は地獄だ」のイ・チャンヒ
イ・タン
無気力に日々を過ごす平凡な大学生
カナダへワーキングホリデーに行くことに憧れている
ささいなことをきっかけに人を殺してしまい、日常が崩壊していくが…………
演じるのは「新感染 ファイナル・エクスプレス」「パラサイト 半地下の家族」のチェ・ウシク
演技力に定評があるだけあり、後半の変貌ぶりは凄まじかった
Netflix映画「狩りの時間」にも出演
チャン・ナンガム
凄腕の刑事
いつもガムを噛んでいる
父親も元刑事で、ある事件をきっかけに病院で寝たきり
イ・タンのことを疑い、執拗に追跡するが…………
演じるのは「センス8」「D.P. -脱走兵追跡官-」シリーズなどのソン・ソック
執念深い刑事を熱演
ノ・ビン
正義の味方に憧れる男
コンピューターやハッキングが得意
イ・タンのことを手助けする
演じるのはキム・ヨハン
ソン・チョン
元刑事
単独でイ・タンを追っている
殺人を厭わない謎の多い男
演じるのは「KCIA 南山の部長たち」などのイ・ヒジュン
ソン・チョンは物語後半の鍵を握る重要な役
その怪演ぶりは凄まじかった
殺人
平凡な大学生だったイ・タン
そんな彼がひょんなことから人を殺してしまう
すぐに自首するべきじゃないか?
死刑になるのか?
家族はどう思うだろう?
先に手を出したのは向こうだ、正当防衛だ!
俺はもうおしまいだっ
イ・タンの思考が非常に生々しかった
家族や友人とも普通に接することが出来ない
食事も喉を通らない
いつ警察が来るかも分からない恐怖
押し寄せる罪悪感
人を殺したらこうなるということを、まざまざと見せてくれる
しかし、殺人は1回では終わらなかった
事件には目撃者がいたのだ
脅迫されたことで、イ・タンは再び人を殺してしまう
終わらない地獄
見ていて胃が痛くなりそうだった
同時にあまりの主人公の悲惨さに、不謹慎だが笑いが込み上げてきた
平凡な大学生だったイ・タン
だが、彼の日常は崩壊した
ヒーローもの
普通の人間が殺人を犯してしまったことで追い詰められるサスペンス、もしくはブラックコメディ
序盤はそういう印象だった
しかし、第4話から物語はガラリと姿を変える
次々と殺人を犯してしまったイ・タン
けれど、彼は捕まらなかった
現場から証拠は一切見つからなかったのだ
それどころかタンが殺した人間は、誰もが凶悪な犯罪者だったということが判明した
悪人を見分ける能力
証拠を残さない能力
何とイ・タンは特殊な力を持つ人間だったのだ
そのことを自覚したタンは、自分のレーダーに引っかかった悪人を次々と殺していく
本作は一種のヒーローものだったのである
「殺人者のパラドックス」に近いと感じた作品は、M・ナイト・シャマラン監督の「アンブレイカブル」
現実世界にヒーローが現れたらどうなる?
どちらもそのことを追求した作品といえるだろう
イ・タンがどうして、そのような能力を手にしたのか?
それに関する説明は一切ない
ヒーローがヒーローであることに理由がないのと同じだ
正義とは?
特殊な能力を持つことが判明したイ・タン
だが、身体能力は常人と変わらない
そのためタンは鈍器やナイフで、相手を仕留める
それはもはや殺人鬼と変わらない
相手が悪人なら殺人は許されるのか?
本作の最大のテーマはそこにある
シリーズの中盤に登場するソン・チョン
元刑事で今では悪人を殺して回っている
道で騒いだだけの者、自分を捕まえようとする者
どんな相手でもソン・チョンは容赦しない
果たして、それが正義といえるのか?
イ・タンのやっていることも同じではないのか?
どこからどこまでが殺していい悪人なのか?
ヒーローとは何なのか?
本作を見ると、おのずと考えさせられる
最後はナンガム刑事もイ・タンを見逃した
イ・タンは神が遣わした英雄なのか?
スリリングで深く考えさせられる一作だ
まとめ
秀逸なアイデアの韓国ドラマ
後半のイ・タンの変貌ぶりが凄まじかった
編集や演出も丁寧でレベルが高い
過激で見ごたえのあるシリーズだ
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/tv/a_killer_paradox/s01
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