前作の「アウトレイジ ビヨンド」のポスターで完結って書いてあるじゃねーかバカヤロー!!
結局、続きあるのかよコノヤロー!!
でもすげー嬉しいよバカヤロー!!(お前、いい加減にしろ
予告編
作品情報
作品名「アウトレイジ 最終章」
監督:北野武
キャスト:ビートたけし、西田敏行、大森南朋、ピエール瀧、松重豊、大杉漣、塩見三省、白竜
上映時間:104分
製作国:日本(2017年)
ざっくりあらすじ
山王会と花菱会の抗争の後、大友は張会長の手助けで韓国に渡っていた
ある時、花菱会の幹部・花田が滞在中の韓国でトラブルを起こし、張会長の手下を殺し日本へ逃げ帰ってしまう
一触即発になる張会長の組織と花菱会
そんな中、大友は手下の市川たちを率い、けじめをつけるために日本に戻ってくるのだが…………………
感想(ここからネタバレ)
「アウトレイジ」に対する東映の答えですね
映画館で「虎狼の血」の予告編を見ていたら、そんな一文が流れた(「孤狼の血」の感想はこちら
たけしの「アウトレイジ」がここまで大きなブランドになるとは思ってもみなかった
マンガの実写化だとかTVドラマの映画版だとか胸キュンな恋物語だとか感動ストーリーだとかアニメ映画だとかが溢れかえった邦画界
鬱陶しいんだよバカヤロー!!
「アウトレイジ」はそんな澱んだ日本映画界にたけしが撃ち込んだ銃弾
当然、異彩を放った
一般受けはしないだろうと正直思った
まさかここまで支持を集めるとは
北野武
北野武監督の出現は衝撃的だった
無駄なセリフを極力排除
とことんまで抑制されたキャストの演技
突発的に起こる暴力
あくまでキャラクターを突き放した視点
大胆な省略の多用
特に初期の作品は独創性で類を見ない
すでにこの時点で完成度はピークに達していたと思う
「その男、凶暴につき」
たけしがバラエティーの合間に映画を撮ったらしい
そんな軽い気持ちで見に来た観客の度肝を抜いた記念すべき監督作品第一作
最初の予定通り深作欣二監督が撮っていたら、その後の映画史が大きく変わっていたのではないかと思う
ハリウッドのように大金をつぎ込まなくても凄みのある映画が作れることをたけしが証明
孤独な刑事と一匹狼の殺し屋
組織をはみ出した二人が火花を散らすクライマックスは凄まじい
「ソナチネ」
世界に衝撃を与えた一作
穏やかな沖縄の海と、子供のように遊ぶヤクザたち
そして、突然訪れる暴力と死
キタノブルーという言葉もここで生まれた
「アウトレイジ」シリーズ
過激で痛々しい暴力
いつものたけし組と呼ばれる面子を排除した日本映画界を代表する豪華なキャスト
飛び交う怒号
ストーリーテリングに重きを置いた作劇
たけし映画としては異色なシリーズ第一作目
新しいヤクザ映画のスタンダードを作り上げた
シリーズ第二弾
関西の組織花菱会が登場
物語は組織同士の抗争へ
大友は前作の敵、木村と手を組む意表を突いた展開
暴力シーンより心理戦や駆け引きがメインに
そして最終章
物語は韓国の海で釣りをする大友から始まる
むっちゃソナチネっぽい!!
このオープニングでハート鷲掴み
手下の市川とのぶっきらぼうだが気を許しあったやり取りも楽しい
そしてすぐに夜のネオン街を走る黒塗りの高級車へ
まさに「アウトレイジ」始まった!!
キャスト
この作品のMVPは間違いなく張会長役の金田時男
演技が素人とは思えない
貫禄ありすぎでしょ!!
この人が会長というだけで張グループがいかに力を持ってるか説明がなくても分かる
そして個人的に好きだったのが市川役の大森南朋
劇中、裏切りや駆け引きばかりがはびこる中で、無邪気に大友を慕ってどこにでもついていく市川の姿にすごく癒された
「アウトレイジ」シリーズはいつも大友の相棒がいい味出してる
花菱会の幹部花田を演じるピエール瀧
物語の発端の事件を起こし、強気で強面のヤクザだったはずが、状況に振り回されてオロオロする姿に爆笑!!
今回、一番美味しい役どころだった
花菱会の新会長を演じる大杉漣
「ソナチネ」からずっとたけし映画の常連だった大杉漣
とうとう「アウトレイジ」に出てくれて、とても嬉しかった
本当に惜しい人を亡くした
あと西田敏行や塩見三省や松重豊や白竜(いきなり適当になったな
魅力的なキャラクターが多すぎて書ききれねーよバカヤロー!!
組織と大友
様々な謀略や陰謀、裏切りや駆け引き
最終章では組織間のパワーゲームが繰り広げられる
そんな組織の思惑を、ただけじめをつけるために日本に帰ってきた大友が、ぶち壊す展開が本当に痛快!!
強大な力を持った大組織が、昔気質のヤクザ一人に翻弄される
それが最終章、最大の見どころ
だが、そうなると不満に思う人もいるだろう
どうせなら最後まで花菱会をぶっ潰してくれよバカヤロー!!
しかし、それだとカタルシスが過ぎる
大友一人が大暴れしてかき回しても、結局組織は存続していく
それが北野武のこの物語の落としどころなのかも知れない
アウトレイジとは何だったのか?
北野監督はかつて「ソナチネ」でヤクザ映画を変革した
エンターテイメントの枠組みを残しながら、芸術性を融合したのだ
だから「ソナチネ」は刺激的な娯楽作品でありながら、前衛的な映画でもあった
「アウトレイジ」の一作目を見た時、正直な感想として退化したと思った
芸術性の部分を取り除き、娯楽性に全振りした印象だったからだ
結果的に「アウトレイジ」は観客の支持を集め、成功作となった
ファンとしては嬉しかったが、作品的には物足りなかった
次の「アウトレイジ・ビヨンド」では即物的な暴力は控えめになり、それぞれのキャラクターの思惑が絡み合うより複雑な物語になった
そして山王会はほぼ終焉を迎えた
そして最終章は大友というヤクザの情念の物語となっていた
大友は最後に自ら命を絶つが、思えば最終章の最初から亡霊のようなものだった気がする
クリント・イーストウッドが演じた名無しのガンマンのように
そう考えると現実にはあり得ない大友と市川の花菱会襲撃による大虐殺もとても腑に落ちる
最終章で再びヤクザ映画と芸術性が融合した
北野武は「ソナチネ」を受け入れなかった日本の観客たちを、段階を追うことで徐々に慣らしていった
そして最終的に受け入れさせてしまったのである
どこまで計算していたか分からないが恐ろしい
まとめ
のちのヤクザ映画に多大な影響を与えた「仁義なき戦い」
だが時代は変わった
新たな模範が必要な時が来たのだ
今後のヤクザ映画は全て「アウトレイジ」と比べられる運命にある
次のスタンダードが現れるまでこのシリーズは大きく君臨し続けるだろう
つまり終わって寂しいぜバカヤロー!!
allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=360444#1
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