映画「女王陛下のお気に入り」感想と解説(ネタバレあり) 女王の寵愛を勝ち取れ!!

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第91回アカデミー賞最多の9部門10ノミネートの作品である
女王陛下の寵愛をめぐる女のバトル
その壮絶さに圧倒された
オリビア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ
3人の女優の演技合戦が凄まじい
美しい宮廷内やきらびやかな衣装も見どころ
かなりブラックであくの強い作品だ


予告編

『女王陛下のお気に入り』予告編

作品情報
作品名「女王陛下のお気に入り」(原題The Favourite)
監督:ヨルゴス・ランティモス
キャスト:オリビア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン
上映時間:120分
製作費:$15,000,000(IMDb推定)
製作国:アイルランド、アメリカ、イギリス(2018年)

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ざっくりあらすじ

18世紀初頭のイングランド。病弱なアン女王に代わって幼なじみのレディ・サラは絶大な権力を手中にしていた。そんな時、没落貴族の娘であるサラの従妹のアビゲイルが、サラを頼って宮廷を訪れた………………

感想(ここからネタバレ)

この作品を見たら女性不信になりそうだ
男が勝てるわけないな………………

女王の寵愛

18世紀初頭のイングランド
アン女王は肥満で虚弱体質
痛風など様々な病気に悩まされていた
イングランドはフランスと戦争状態だったが、女王のアンは無関心
代わりにアンの幼なじみで親友のレディ・サラが、女王を操り国を動かしていた

そんな時、レディ・サラの従妹のアビゲイルがサラを頼って宮廷を訪れた
アビゲイルは元々は貴族だったが、父親が賭けに負けて没落した
貧しくて身なりもみすぼらしいアビゲイル
サラは彼女を宮廷の召使いとして働かせた

アン女王は痛風に悩まされていた
アビゲイルは森で薬草を摘み、こっそり王女の寝室に忍び込み、彼女の足に薬を塗った
それを知ったサラはアビゲイルをムチで打たせるが、女王の痛みが和らいだと知り、彼女を侍女に昇格させた

アン女王はかつて17人の子供を全て亡くし、代わりに17匹のウサギを飼い、我が子のように接していた
議会で忙しいサラに代わって、アビゲイルが女王の相手をした
サラが嫌うウサギをアビゲイルは一緒に可愛がり、女王とアビゲイルの仲は急速に親密になっていった
サラが気づいた時には、アビゲイルはアン女王のもう一人のお気に入りになっていた………………

登場人物

アン王女
イングランドの女王
病弱で肥満体型
政治に興味がない
車椅子に乗っていることが多い
演じるのはオリビア・コールマン

アビゲイル
没落貴族の娘
女王に取り入ってのし上がろうとする
演じるのはエマ・ストーン

代表作

「ラ・ラ・ランド」
話題を呼んだ傑作ミュージカル
エマ・ストーンはアカデミー主演女優賞を受賞

レディ・サラ
アン女王の親友で幼なじみで恋人
彼女を裏で操り、国の実権を握る
演じるのはレイチェル・ワイズ

代表作

「ナイロビの蜂」
愛する妻はなぜ死んだのか
謎を探るうちに陰謀に巻き込まれていく男を描くサスペンス
レイフ・ファインズと共演

ナイロビの蜂 (字幕版)

ロバート・ハーリー
トーリー党員
戦争は経済的損失が大きいと反対する
派手好きな男
アビゲイルをスパイとして利用しようとする
演じるのはニコラス・ホルト

代表作

「ウォーム・ボディーズ」
ゾンビが女の子に一目惚れ?
異色のゾンビ映画
ニコラス・ホルトはイケメンのゾンビを好演

監督

ヨルゴス・ランティモス
ギリシャ出身
代表作に「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」など
恥ずかしながら1本も見たことがなかった

三角関係

アン女王とアビゲイルとレディ・サラ
「女王陛下のお気に入り」はこの3人の物語である
そこには欲望と愛憎、嫉妬が入り乱れる

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オリビア・コールマン

女王陛下というとイメージとしては毅然として威厳がありオーラを放つ存在だった
だが「女王陛下のお気に入り」のアン女王には愕然
ぶくぶく太り、我がままで政治に関心がなく、気に入らないことがあるとヒステリーを起こす
それでいて寂しがり屋でかまってちゃん
女王としての威厳などどこにもない
こんなのが国のトップ
女王というもののイメージが見事に壊された

幼なじみで恋人のレディ・サラにいいように操られるアン女王
一見、無能で御しやすく見えた
実際、アビゲイルにもまんまと利用されている
けれど、時折ハッとさせられる
ただのおばさんに見えるが、やはりこの人は女王なのだ
そう感じられる瞬間がある

夫を亡くし、17人の子供を失ったアン女王
女王としての重責と孤独
その複雑なキャラクターをオリビア・コールマンは見事に演じている

エマ・ストーン

エマ・ストーン演じるアビゲイルは凄まじい
元は貴族だったが、父親が賭けに負けて没落
アビゲイルはドイツ人の男に売られてしまう
最底辺の生活を送ってきたアビゲイル
再び上流階級に戻れるのなら、何でもする

アビゲイルは様々な策を使って、女王に気に入られようとする
そのために演技をし、汚い手でも使う
どちらかというと清純派のイメージが強かったエマ・ストーン
ここまでストレートな悪女を演じるとは

王女の前では従順で清純で、裏ではふてぶてしい態度
エマ・ストーンの体当たりの演技には目を見張るものがある
エマは本作でヌードまで披露している
上昇志向の塊のようなアビゲイル
ある意味、清々しい
この作品はアビゲイルの出世物語でもある

レイチェル・ワイズ

レイチェル・ワイズ演じるレディ・サラ
アン女王を操り、国を動かす
ご機嫌など取らず、女王にも言いたい放題
まるで主従が逆転しているようだ
何という悪質な女だろう
最初はそう思った

ところが徐々に印象が変わってくる
アン女王に気に入られるアビゲイル
彼女は決して女王の気分を害したりしない
耳障りのいいことばかりを口にする
それはただ気に入られたいからである
そこには愛情など欠片もない

女王に厳しい言葉を口にするレディ・サラ
彼女はおべっかなど使わない
いつも本心を言う
アンはサラにとって女王であり親友であり恋人だからだ
そこには少なくとも情愛がある

この物語の悪役だと思っていたレディ・サラに、いつの間にか感情移入していた
サラを血の通ったキャラクターにしたレイチェル・ワイズの演技は素晴らしい

撮影

「女王陛下のお気に入り」の映像の美しさは目を見張るものがある
この作品は主に日光、ロウソクの火、暖炉など実際の照明で撮影した
この方法はスタンリー・キューブリック監督の「バリー・リンドン」を思い起こさせる


「バリー・リンドン」
18世紀のアイルランドを舞台に、野心に燃える若者の半生を描いた歴史ロマン
特殊なフィルムを使い、屋内シーンをロウソクの火などで撮影した
その映像美は圧巻

ウサギ

レディ・サラを排除し、見事に上流階級に返り咲いたアビゲイル
もう邪魔者はいない
だが、アン女王は何故か不機嫌だ
急にアビゲイルに足を揉めと言い出す

言われたとおりにするアビゲイル
無表情なアン女王
二人の間に通い合うものは何もない
ただ空虚さが広がっている

最後にインサートされるウサギたち
きらびやかな宮廷にいる上流階級の人間たち
それらは蠢くウサギたちと大差ない
そんなメッセージに思えた

歴史的事実

アン女王は6回の死産、6回の流産を含め生涯に17回妊娠したが、一人の子も成人しなかった
1714年8月1日に女王が崩御すると、アビゲイルは辞任して宮廷から離れて生活
1734年に亡くなった

実際はハーリーはアビゲイルのいとこだったが、映画ではそのことについて言及されなかった

映画の中では敗北して終わったレディ・サラ(サラ・チャーチル)
実はその後、84歳と長生きした
子孫にウィンストン・チャーチルを輩出


「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 (字幕版)

まとめ

宮廷の人間たちの欲望と情念
それを美しい映像と音楽、ブラックな笑いで包んだ
見事な出来栄えの作品である
名女優3人の演技合戦は凄まじい迫力
それだけでも見ごたえ十分だ


Joouheika no okiniiri (2018) on IMDb


rotten tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/the_favourite_2018
allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=365099

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