Netflixのアダム・サンドラー映画
宇宙飛行士のヤクブがある調査のために地球を離れて、6ヵ月が経ったが…………
ユーモアを封印したアダム・サンドラー作品
人を選ぶが、知的で難解で美しいラブストーリー
宇宙飛行士の孤独
亀裂の入った妻との関係
いつものアダム・サンドラー作品だと思って観ると、そのシリアスな雰囲気に困惑するだろう
ほとんどがアダム・サンドラーの一人芝居で、アクションもなくて忍耐力が必要
彼の前に現れるクモのような謎の宇宙生物
これは現実なのか?
様々な解釈が可能な作品
アダム・サンドラー作品ではもっとも文学的な内容だろう
宇宙船での生活はかなりリアルで興味深かった
宇宙の謎を探る壮大な旅だが、物語はむしろ主人公の内面を探求していく
そうして辿り着いた真実とは?
個人的にはかなり胸に響いた
ラブストーリーとして秀逸
そして、やはりアダム・サンドラーの役者としての力量は素晴らしい
本格SFが好きな人なら、見る価値があるだろう
予告編
作品情報
作品名「スペースマン」(原題SPACEMAN)
監督:ヨハン・レンク
キャスト:アダム・サンドラー、キャリー・マリガン、クナル・ネイヤー、レナ・オリン、イザベラ・ロッセリーニ
上映時間:108分
制作国:アメリカ(2024年)
ざっくりあらすじ
チェコの宇宙飛行士ヤクブがある調査のために地球を離れて、6ヵ月が経った。宇宙船での孤独な日々。亀裂の入った夫婦関係。不安にさいなまれるヤクブの前に、船内に隠れていた謎の生物ハヌーシュが現れ…………
感想(ここからネタバレ)
こんなに笑いのないアダム・サンドラー映画、初めてかも…………
「スペースマン」
夜空に紫色の雲が出現して4年が経った
チョプラ雲と呼ばれるそれの正体は、いまだ判明していない
チェコ共和国の宇宙飛行士ヤクブは、その調査のために旅立った
それは1年に及ぶ過酷な単独任務だった
地球を発ってから6ヵ月が過ぎた
宇宙船での日々は孤独だった
妊娠中の妻レンカと最近は連絡が取れない
自分は見捨てられたのではないか?
ヤクブは極度の不安に苦しんでいた
ヤクブは毎日、悪夢を見た
彼の精神は限界を迎えていた
そんな時、宇宙船のトイレの中で巨大なクモのような生物を発見した
驚き逃げるヤクブ
自分は頭がイカれてしまったのか?
そして、その謎の生物はヤクブに話しかけてきて…………
作品解説
原作はヤロスラフ・カルファーによる小説「Spaceman of Bohemia」
ヤロスラフ・カルファーはチェコ出身で、15歳でアメリカに移住した
監督はドラマ「チェルノブイリ」でエミー賞を受賞したヨハン・レンク
ヤクブ
チェコの宇宙飛行士
全世界が注目するミッションに選ばれたため有名人
任務に熱中するあまり、妻のレンカとはギクシャクしている
孤独な宇宙船の日々が、ヤクブの精神をむしばんでいくが…………
演じるのはアダム・サンドラー
本作では笑いを封印し、1人の宇宙飛行士の孤独な心情を見事に浮き彫りにしている
レンカ
ヤクブの妻で妊娠中
最初の子供を流産したことが、いまだにレンカを苦しめている
自分が夫に置き去りにされたと感じ、レンカは離婚を決意するが…………
演じるのは「華麗なるギャツビー」「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」などのキャリー・マリガン
Netflix映画では「時の面影」「マエストロ: その音楽と愛と」に出演し、どちらも傑作
ハヌーシュ
クモのような謎の宇宙生物
自称太古から生きているエイリアン
ヤクブに関心を持ち、彼の精神を覗き見る
やがてヤクブもハヌーシュに絆を感じるようになるが…………
ヤクブの相棒的存在となるハヌーシュ
声を演じるのは「スイス・アーミー・マン」「THE BATMAN ザ・バットマン」のポール・ダノ
アダム・サンドラー作品
アメリカでは絶大な人気を誇るアダム・サンドラー
Netflixとも長期に渡る契約を結んでいる
しかし、日本での人気はイマイチな印象
個人的にも苦手だった
だが、最近のアダム・サンドラーは良作続き
「アンカット・ダイヤモンド」「マーダー・ミステリー」「HUSTLE/ハッスル」「バト・ミツバにはゼッタイ呼ばないから」「レオ」
どれも面白かった
本作では孤独に苦悩する宇宙飛行士というシリアスな役柄に取り組んでいる
正直、アダム・サンドラーファンなら困惑すること間違いなし
ガッカリする人も多いだろう
けれど、延々と続く一人芝居で間を持たせる存在感はさすがアダム・サンドラー
その力量を改めて思い知らされた
SF映画
知的で哲学的で難解
本作はかなりの本格派SFとなっている
近いのは「2001年宇宙の旅」や「インターステラー」などだろう
正直、内容はかなり地味で万人向けとは言い難い
退屈する人も多いだろう
だが、内容は非常に深くて興味深い
宇宙の謎よりも、ヤクブの内面を探求していくストーリーも見ごたえがあった
宇宙生物ハヌーシュは実在したのか?
様々な解釈ができるのも本作の魅力のひとつだ
夫婦
宇宙での長くて孤独な時間
ヤクブは嫌でも自分の内面に向き合っていく
父の汚名を晴らすことに固執していた自分
そして任務に熱中し、レンカを置き去りにしてしまった
彼女以外、他には何もいらなかったのに
ヤクブはようやく自分の愚かさに気付く
紫の雲の中は、宇宙の「始まり」と「終わり」の場所だった
もしやり直せるなら、次は間違わない
ヤクブは自分の中の真実に辿り着いた
まとめ
アダム・サンドラーの異色作
文学的で難解
商業性を無視した作りは、Netflixでしか無理だったかも知れない
人を選ぶが、歯ごたえのある作品だ
Rotten Tomatoes
https://www.rottentomatoes.com/m/spaceman_2024
allcinema
https://www.allcinema.net/cinema/393796
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